05 1部
「ツボー」
「なんだこいつ可愛い」
「・・・ガウ」
◆◇◆
今から遡る事50分。 俺の前に、それはそれは不気味な表情をしたポケモンが現れたのだった。
「ツッボ!!」
「・・・、葉っぱ生えてるし草ポケか?」
そのポケモンはペタペタ、と足である・・・あれはなんだ、根っこだか蔦を使ってこっちまで走りよってきた。 けして早いわけではなかったが、ついその行動を見守ってしまう自分がいた。 ウインディたんはまったく警戒心のない俺の後ろでウウ、と唸っている。
「ツボ」
俺の目の前まで走りよってきたこの草ポケはそのちいさ・・・げふんげふん。 つぶらな瞳をウル、っと潤まして俺に片手(片方の葉っぱ)を差し出してきた。 なんだろう、これ。人間で言う握手を求めているのだろうか。 胸がキュンとする。なんだこいつかわ・・・
「ぶっ、!!?」
俺がふにゃ、と隙を見せたときだった。 目の前のポケモンは急に目つきを変えたかと思うと差し出してきたその葉っぱで、俺の右頬を叩いた。 突然の衝撃に俺は軽く目を見開き、その叩かれた部分を片手で覆い隠す。 コイツ、
「ぶっ殺す」
ギラリと、すぐ背後にいるウインディの目が輝いた気がした。
*
「ウインデイ、かえんほうしゃで丸焼きにしてやれ!!」
「ガウウッ!」
跳ねて俺たちと距離を取るポケモンにウインディは容赦なくかえんほうしゃを浴びせる。 しかし、どうやら相手も一筋縄でいくようなポケモンじゃないらしく、間一髪のところで避けられてしまった。 俺は引きつる頬をピクピクさせながら笑う。ぼっこぼこにしてやんよ
「ウインディ、かみつく!」
「ツボ!」
ウインディは地を蹴り上げて飛び掛る。 しかし草ポケはそのタイミングを見計らってどこからか蔓を伸ばしてきて、ウインディの足に絡めた。 これが、あれか。つるのムチ。 非常にむかつくなあ。
「ガウ!」
「ウインディ、そんな蔓噛み千切れ!」
俺の号令を背に、蔓に噛みつこうとするウインディには遠くからすごいスピードで飛んできた葉っぱが直撃した。 葉っぱカッターですねわかります。・・・じゃねえよ!!
「軟弱草ポケが・・・ちょづいてんじゃねえよああ?」
ついに俺の堪忍袋の緒も切れそうだ。 俺を真正面から見据えてくる草ポケに舌を打つ。ぜってえ潰す。
「ウインディ、火炎車。・・・当たるまで突進し続けろ」
任せとけ、というかのようにウインディは一度短くほえた。 直後にはウインディの身体の周りには炎がまとわりつき、そしてウインディは草ポケに向かって駆け出した。
◆◇◆
「すみません、・・・どうしても無理ですか?」
「ごめんなさい、野生のままだと責任を取る人もいなくなってしまうし・・・。 それに回復してあげられるのは手持ちのみ、って決まりなの」
だからごめんなさいね、そう言って新しいお客の接客をするジョーイさんをボウと眺めた。
今現在、俺の腕の中には名も知らない、草ポケがまるで死ぬように眠っていた。 此処までにしたのは俺なのだが、さすがにこれはいろいろとキツいものがある。
少し、熱くなりすぎた・・・か。
苦虫を噛み潰すように顔を顰め、 漸く自力でたどり着くことの出来たヨシノシティのポケモンセンターのソファに腰掛けた。
いっそのことコイツを手持ちに加える・・・てのもありだが ・・・この草ポケがそうおとなしく俺のになるわけもない。
頭を痛ませながらうーん、と悩むが答えは一向に見つからず。 腕の中で眠る草ポケはだんだんと体力が落ちてきているようにも見える。
このままだとヤバい・・・かも?
トレーナー協会が定めた規定を思い出してハア、とため息を吐き出す。 死なせたら、俺犯罪者だし。 つうか絶対死なせたくないし。
「しょうがねえ、よな」
ポケモンセンターの表で出る。 先ほどグリーンに送ってもらったときに餞別、ともらったモンスターボールを草ポケの頭にコツリ、と当てた。 そうすると中からは赤い光が溢れ、草ポケを包み込むようにしてボールの中へと戻っていく。
そして、それからはあっけなかった。
何回か傾くとまるで抵抗を失くしたかのように、ピタリとボールの動きが止まる。 確か・・・この感覚は今回で2回目、だったか。
動かなくなったボールを拾い上げて、ポケモンセンターへ向かうために踵を返す。 最後にハア、とやりきれない思いとともにため息を吐き出して、空を見上げた。
空は俺の気持ちなんて関係ない、と一蹴するように雲ひとつない快晴だった。
END
草ポケ正体はたぶんきっと皆さんにはバレているかな ちなみにツボツボじゃありません
← / →
|