03 1部
俺は思う。
「あ、キミがタキくんかい? 話は聞いてるよ、僕はウツギ!よろしくね、タキくん」
世界はなんて、広く、狭いのだと。 似たようで、似ていない人物を俺は何人か知っている。 グルグルと回る世界の中心で俺は引きつる笑みを浮かべた。
「は、はあ・・・タキです」
ニコニコと人の良い笑みを浮かべ、握手を求めるウツギ博士に、俺は戸惑いながらも手を差し出した。
◇◆◇
今から約15分前ほどの出来事。 恐る恐る踏み入れたリッパな研究所の玄関は綺麗に掃除されていてやたらと輝いて見えた。 そして、キョどる俺を優しく出迎えてくれたのはこの研究所の助手のようで。 忙しなく動き回る助手の目に留まった俺は優しく手厚く応接間へと導かれたのだった。
「あの・・・ウツギ博士を・・・」
始終笑顔を浮かべやたらと機嫌のよさそうな助手へそう切り出せばカ、っと目を見開かれビビる。 一瞬ちびったかと思った。 出された熱いお茶をチビチビと口先ですすりながら相手の様子を伺う。 どうしよう、目を見開いたまま動かなくなったんだけど。
「あの、」
「タキさん、あの人のことはもう忘れましょう。きっともう・・・」
フルフルと力なく首を横に振る助手さんに俺はわけもわからなくは?と声を漏らした。 なんだ、そのウツギ博士はもう帰ってこないんだよ的なノリ。 なんでさっきからそんなにうれしそうなんだ。
「第一聞いてくださいよ!こんなでっかい研究所に助手が一人だけってなんて苛めですか? そもそも人の使い方荒すぎて僕も吃驚! 普通に嫌がらせとしか考えられません。それなのに時給があれだけなんて・・・」
家計も火の車! 火の車状態もいいところですよ! となぜかすごい勢いで愚痴りだしてしまった助手にあいまいに返事を返す。 え、何これ。俺どうしればいいんですか
「つうか待て助手。なぜ俺の名を知ってる」
瞬間ピタリと口と動作を表していた腕の動きをとめた助手にまたもやビクリとびびる。 目が、目がやばい。怖いよ目が。
「博士から、オーキド博士の知り合いが此処に訪ねてくると聞きまして。 えっと・・・今更ですがタキさんですよね?」
「いや、まあ・・・そうですけど」
なぜ、オーキド博士の名が出てくるんだ。 何そのもともと俺がこっちに来ることは計画していたとおりですみたいな発言。 まさか、俺ハメられた?
「ウツギ博士はどこに?」
「隣町に。すぐに帰ってくるとおっしゃっていたのでもうすぐ帰ってくると思いますが・・・」
見るからにどんどん下がっていく助手のテンションに呆れる。 なんだこいつ、めちゃくちゃめんどくせえ・・・! どれほどまでにウツギ博士が帰ってくるのを望んでいないかがわかるが、・・・ここまで来るともはや病気だな。 どうだ、俺と一緒に引きこもりライフを送らないか。引きこもりは楽だぞ
「ただいまー、ただいま帰ったよ・・・って、あれ?お客さん?」
玄関のほうからやけに明るい男の声が響いて聞こえてきた。 助手は小さく舌をうち、そしてこれまたやけに明るい声でおかえりなさい、と叫んだ。
「応接間かぁ、あ!キミがタキくんかい?」
そして、冒頭にいたるわけである。
*
「へえ、なかなかいいポケモン持っているじゃないか」
ウインディを撫でながらそう呟くウツギ博士にありがとうございます、と返事をする。
ボールの外に出された俺のウインディだったが、知らない土地の匂いを感じ取ったのだろう。 クウン、と切なげに鳴いたかと思うと、久しぶりに・・・否、始めてかもしれないが俺に擦り寄ってきた。 もうその姿がかわいくてかわいくて。 ついわき目もふらずにウインディに抱きついてしまった。
「ガウ」
ああ、うぜえって? ですよね、そんなウインディたんがかわいいままのはずがあるわけがない。 若干なみだ目になりながらウインディから身体を離し、ウツギ博士へと見せた。
「うちんちのウインディです。レッド・・・あーと、近所の子に肥満って言われたんですけど・・・」
これまでの経緯を簡単に説明し目を伏せる。 どうしよう、これから。旅・・・しなくちゃいけないんだよな。
「ああ、カントーの新チャンピオンだろ?オーキド博士から話は聞いたよ。 ・・・うん、確かにちょっと肥満気味だね。運動させたほうがいい」
あわよくば、マサラに帰ろうとしていた自分がいたのは事実だった。 肥満じゃなかったらきっとウツギ博士に事情を説明してマサラまでの帰り方を教えてもらっていただろう。 しかし、これで旅をする理由ができてしまったのだ。 俺は肩を落とし、俺を見上げるウインディを撫で付けた。
「ジムバッチを集めるのはどうだい?仲間を集め、君もレッドくんみたいにチャンピオンになるんだ」
俺が。レッドと同等の力のチャンピオン・・・ですか。 ないないない、と乾いた笑い声をあげる。 しかしチャンピオンにはならなくとも、旅を続けて、 ウインデイを育て、そしてあの二人に戦いを申し込むのは悪くない。 強くなってあの二人をぎゃふんと打ち負かしたとき、最高に気持ちいいんだろな。 ボウと考えながらそれも案外いけるじゃないか、と一人薄く笑った。
「そうですね、やってみようかと思います」
「そうかい!なら、まず一個目のバッチは此処から2個先にある町、キキョウシティにいくといい。 きっといい力試しにもなるだろうさ」
ウインディをボールの中へとしまい、そしてペコリと小さく礼をする。
「ありがとうございます。」
「ああ、立派なトレーナーになれるといいね」
優しい笑みを浮かべるウツギ博士に俺も釣られて笑う。
ウツギ博士と一人だけの助手に見送られ、俺はこの町、ワカバタウンを後にした。
END
ヒビキくんやコトネちゃんともそのうちで会いたいです。
時系列がおかしいことになっていますがそこら辺は気にしないでください (金銀は初代の3年後の物語)
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