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聖なる夜に
番外編



12月25日。
煌びやかな灯りが街を照らし、恋人達と一人すれ違う。
性なる・・・げほんげほん、聖なる夜とは今日のこと。・・・否、俺は認めないけどな。
だって、だって。

「ただキリストが生まれた日なだけ・・・ぅ、げほ、げほごほ!!」


ズズ、と水音を立てて鼻水を啜る。
すれ違う恋人達がゴミでも見るかのような冷たい視線を送ってくるのを感じ、止まらない咳をこぼしながら少しだけ歩くスピードを速めた。


「うぅ・・・なんでなんだ・・・。」

なんでよりによって聖なる夜に風邪を引き、しかも家には風邪薬も温かい食べ物も何もなくて、しょうがないから風邪薬を貰いにご近所さんの家へ行っても誰もいなくて、またもやしょうがない、とマスクコートマフラーを装備して一番近い街へと来たら俺の冷え切った体とは正反対の熱々のカップルに冷たい視線を送られなくてはならないのだ。
ていうか、キリストがなんだっていうんだ。
12月25日に生まれた奴ならこの世界中にわんさかいるだろ!メリークリスマス&ハッピーバースディ世界中の12月25日生まれの人!


「あ、生姜湯・・・」

買い忘れた。
ふと思い出してしまった事実にその場に足を止めた。
ビニール袋の中身をチラ見して、まあ見つかるわけないとすぐに視線をほかへ逸らす。
一番の、最重要項目を買い忘れるなんて、なんたる不覚。
だから俺の元には職も彼女も舞い降りてこないんだ。あ。なんか自分で言ってて悲しくなってきたグスン。


「すっげー百面相。つくづくお前と知り合いって周りに思われたくないわ。」

「・・・グリーン?」


なんて失礼な。
一言文句でも言ってやろうかと何処かへ行っていた意識を呼び戻しキ、と睨みつけるようにして声をかけてきた人物へと視線を移せばそこにいたのは本気で嫌そうに顔をゆがめた、よく知る人物で。
心の端で少しだけ息を吐いておお、と片手を力なく振る。
あ、そういえばグリーンってば飛行ポケモン持ってなかったか。


「んだよ、風邪でも引いたのか?バカは風邪引かないっていうけどな」

「・・・なんとも今日は痛烈なお言葉ばかりで」

熱でも出てきたのだろうか。
ボウと霞んできた意識につい目を擦る。こりゃ本格的に風邪を引いたかもしれない。
1,2歩歩いてグリーンへ近づくと、ポスリと頭をグリーンの肩へ乗せた。
グラグラと、まるで世界が反転するかのような錯覚に酔いながらボソボソと伝えたい言葉を口にする。
ああ、届けばいいな。てか届いてくれなきゃ困るんだよ。

「お、おい・・・?大丈夫かよ」

「ょ・・・ゆ」

「・・・あ?きこえな、」

「生姜湯」


買って来てくれ。
バサ、とビニール袋が俺の手の内から音を立てて落ちた。
グラリ、まるで後ろから引っ張られるように身体が後ろへ傾きそしてバランスを失った。




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