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09
1部



「すげえ。なんか歴史的」

ゲートを通り抜けた先に広がるのは、カントーの方では見たこともないような歴史的雰囲気のある街だった。
日も落ちているせいか、どこかの家から夕食なのだろう焼き魚の匂いが漂ってきて、つい腹を摩る。

そうか、此処が・・・


「キキョウシティ、か」


ほかの町にあるポケセンやフレンドリィショップよりも色が落ち着いているのは、周りの風景に馴染むようにしているから・・・らしい。

キキョウシティの入り口に合った案内板に書いてあったことを思い出しなるほど、と一人頷いた。
確かに言われてみればそれらの建物は、どことなく暗い色をしている。
なるほど、なんかすごい。

「?あれ、」

ふと、違和感に眉をしかめた。
なんだ。この違和感は。何かが、おかし・・・

「!!!」

バ、と腰に手を当てる。
タラリと、冷や汗が背中を伝った。

「・・・ボール、」

どこやったっけ。
サア、と血の気が失せていく。

空はすでに茜色に染まり、辺りは赤く照らし出されていた。
空を群れで飛ぶオニスズメの影を見つめながら立ち尽くす。
ドキドキと煩く脈打つ心臓。
グルグル回る脳内。
カラカラに乾いた口。
息苦しく、詰まった胸。

「やば、」

口を片手で塞ぐ。
何もしていないのに乱れていく呼吸にただ喘ぐだけ。まて、落ち着け。余計なことを考えるな、落ち着け。

「・・・」

遠くのほうで聞こえる、高い耳鳴りに眉を寄せる。
焦りすぎだ。こんなんじゃ見つかるもんも見つからない。
ごっそりベルトにつけていたボールが二つともなくなっているのをもう一度確認して息を飲み込んだ。
どうなってんだ。確かに最後に勝負したときまではあったはずだ。
考えろ思い出せ、あったはずだろ。ものの数十分前までは。

「・・・」

考えども考えども答えは一向に見つからない。
俺は、なくしてしまったのか。大切なものを、大切にしているものを。
ドクドクと血管を流れる血液が増す。暑いようで寒い。鳥肌が、立つ。


「っ、・・・」

「おや、そこの旅人さん。何かお困りごとでも?」

肩を軽く叩かれ、いつの間にか下がっていた頭をグイ、と持ち上げて真正面に視線を向けた。
目の前には、人のよい笑みを浮かべたおじいさんがいて少しばかり跳ねた心臓を押さえつける。
ニコニコと目じりに皺を寄せて笑う彼にジワ、と目が潤んでいくのに気がつき手の甲で口元を押さえつけた。馬鹿、何なきそうになってんの俺。


「立ち話もなんです。よかったらついてきなさい」

気がつけば、コクリと首を縦にうなずかせていた。





「ふむ・・・ポケモンが」

「は、はい・・・」

真向かいに座るおじいさんの膝上で眠るポケモン・・・マダツボミを見つめながらポカンと口を開きっぱなしにする。
え、こいつマダツボミだよね?んん?
その小さいのか大きいのかよくわからない口を開きながら眠るマダツボミに視線は釘付け。
どこか俺の手持ちのマダツボミとは違うのだが、ここまでなついてくれたらそれはそれはかわいいのだろう。
キュ、と眉間を指と指で挟み、痛覚を刺激した。


「・・・もしかしたら、」

「え?」

心当たりがあるのか、と吃驚しておじいさんの目を見つめれば、思っていたよりも鋭い眼光に少しばかり目を見開いた。
ドク、と心臓が鳴る。嫌な予感が、した。

「ゴース達に攫われたやもしれん」

「・・・どうゆう、事ですか?」

ゴース。そのポケモンの名前に顔を顰めた。


「・・・この街は古きを大切とする場所じゃ。
雰囲気がゴース達に好かれやすいのかここら辺はゴースがよく集まってくる。
もともとが悪戯好きなポケモンじゃ、・・・知らぬ間にボールを取られても不思議ではないの」

「・・・俺は、どうすればいいんですか?」

思っていたよりも冷静な自身の声に少し自分で驚く。
どうやら頭ん中で考えている事すべてが吐き出されているわけではないようだ。
ぐちゃぐちゃの脳内を隠しながら、冷静を被る。真正面に瞳を見据えればおじいさんは小さく唇を開いた。

「・・・名前は、なんと?」

「タキ、です」

「そうか、わしはこの町の長老を勤めている。・・・タキとやら、うちのゴース達が迷惑をかけてすまんな。
・・・必ずおぬしの元にポケモンを返すことを誓うから、安心せい」

ニコリと、俺に声を掛けてきてくれた時のように目を細めて笑う長老に口を結ぶ。
ジワ、と熱いものがこみ上げてくるのを飲み込んで頭を下げた。


「・・・お願いします・・・!」

ゆれる柱を中心としたマダツボミの塔で、深く、深く、思いと願いを込めて頭を下げた。


END


誰だ9話目中にハ●トさん出すとか言った奴!私だ!

しかしなぜこうなった。どこ行ったのウインディたんマダツボミたん。



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