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- ナノ -



07
1部



「・・・よし。ウインディ、準備はいいか?」

「・・・ガウ」


泊まるために借りた一室で俺とウインディは向かい合って座っていた。
電気もつけずそのままの部屋は、外から入ってくる夕焼けの光だけが明かりとなって薄暗く室内を照らしている。

・・・さあ、此処からが―勝負だ。

俺は目を閉じて深く深呼吸をし・・・そして手に持つ、一つのボールの中心ボタンを押した。


「―出て来い、草ポケ」

俺の合図とともに、赤い光に呑まれながらボールの中から現れたのはあの、草ポケで。
驚いたようにその小さな瞳をパチパチと何度も瞬きを繰り返す姿は・・・まあ、可愛い。
・・・って、そんなこと言ってる場合じゃなくて。


「ツ・・・ボ!」

草ポケは俺とウインディの姿を確認するなり急いで距離を取った。
そんな姿を俺とウインディは見つめながら静かに、静かに意気込むのだった。

「落ち着け、草ポケ。・・・俺たちは、お前の敵じゃにゃっ、」

ベチン、と勢いよく飛んできた葉っぱが頬を直撃し、見事なまでにセリフが遮られた。
ヒクヒクと頬が引きつるが、・・・我慢しろ、我慢だ我慢我慢。

「ガウ・・・!」

「ウインディ、待て」

ウウ、と唸りながら今にも飛び掛りそうな姿勢のウインディを片手で制する。
此処でまた俺たちが危害でも加えたら、ますますこの草ポケは俺たちを信用しなくなってしまうだろう。
それだけは、避けたかった。

「・・・このとおりだ、草ポケ」

正座をして、両手を地面に付ける。
目を見つめたままの草ポケは、ぎょっとしたように身体を振るわせた。

「俺と・・・一緒についてきてくれないか?」

「ツ、・・・ツボ・・・!」

威嚇するようにどこからか伸ばしてきた蔦をグネグネと空中をさまよわせる姿は
まるで迷っているようにも見える。
実際にはただの威嚇なのだろうけれど。俺は、息を深く吸い込んで―頭を下げた。

「お願いだ、・・・マダツボミ」

グラリ、空気が揺れた気がした。
―と、思った次の瞬間俺の背中には鈍い痛みが走った。
きっと、あの蔓ではたかれでもしたのだろう。そりゃいてえよ。
若干涙目になっていることを悟られないよう、今よりも深く頭を下げた。




「タキさん、ポケモンの回復が終わりましたよ」

「あ・・・ありがとうございます」

「・・・あの、このマダツボミ・・・」

「・・・?」
(マダツボミ?)

「足とかが・・・その、切断された後があって・・・どうやらまた成長してきたから治ったようですけど、」

「切断・・・?」

「先ほど野生だったとおっしゃってましたよね?
もしかしたらこの子、捨てられた子なんじゃ・・・。」

「捨て、られた?」

「通常、29番道路にはマタツボミは現れないんです。だから、きっと・・・」

「・・・そう、ですか」





あんなこと聞かされたら、ゲットしてまたはいさようなら・・・なんて、出来るわけがないだろ。
クチビルをかみ締めて、背中に走る痛みを紛らわす。
誰が・・・引き下がってなんて、やるものか!

「ッ、ボ!!」

「・・・ウウ」

唸り声を上げるウインディ。
必死に俺に攻撃を仕掛けてくるマダツボミ。
全てが、俺の中では悪循環だった。
ああ、そうだ。前回俺は言った。シリアスなのはこれでおさらば、俺はこんなに弱くないと。

「っ、だー!!あーもう!いい加減にしろっ」

勢いよく立ち上がった俺の頭上に迫り来る蔦を、片手で受け止める。
だんだんと攻撃が弱くなっているのくらい、わかってるんだよ馬鹿。
おびえた目で俺を見上げるマダツボミに、俺はグイ、とボールを差し出した。
―マダツボミの、ボールだ。

「おい、草野郎。てめえに選ぶ権利をくれてやる。
俺とついてくる気がないのなら、全力でこのボールを壊せ。
お前の、その強い意志があんならそんくらいたやすいことだろ?
もしも、俺に付いてくるって勇気があんなら・・・そうだな、ボールン中、入れよ」

お前には、選ぶ勇気くらいあんだろ?
挑発するように不敵に笑って見せれば、鋭い目つきへと変化した草ポケモンにクツリと笑う。
どうやら回りくどいことなんてしないで、はじめからこうしてればよかったようだ。

「ッボ」

吐き捨てるように一声マダツボミは鳴き声をあげると、―自ら、そのボールの中へ入っていった。

「・・・交渉成立だな、マダツボミ」

俺はお前を捨てずにどこまでも一緒にいてやる。かわりに、お前は俺のために戦うんだ。
・・・すばらしいだろ?お互いにとって。
勿論、大切にしてやるよ。

「ウインディ、新しい仲間だ」

今までマダツボミばっかで悪かったな。
そんな意味を込めてウインディの頭を撫でてやる。
久しぶりにウインディは俺の撫でる手に、目を細めてくれた。


END



まさかのマダツボミ過去有に管理人さえも吃驚^^

主「んー・・・はあ?なんだこの機械、壊れてんじゃん、つかえねー」
図鑑ポイ



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