私にはお付き合いしている人がいる。
二歳年上の尾浜勘右衛門先輩。
幼なじみでお隣りさんの雷蔵兄ちゃんの友達で……顔が良く、いわゆるイケメンに分類される人だ。
付き合い始めた当初は自分は面食いかと悩んだ時期もあったが、今ではいい笑い話だ。
さて、本日は菓子会社の陰謀により恋する乙女がチョコレートに想いを込め想い人にプレゼントする日である。
私も去年、選別に選別を重ね厳選されたチョコを尾浜先輩に渡した。しかし、今年は違う。
私は高校入試を控えている受験生なのだ。そのせいで、気を使って下さった尾浜先輩は一週間前に"今年はチョコはいいよ"とメールを下さり、私はこうして今自室にて勉強をしているのだけれど……、
「集中出来るわけないよおお!!!」
尾浜先輩すごくモテるもん!去年なんか、鞄いっぱいに紙袋二つ分あったし、先輩の学校顔面偏差値高いし……。いや、先輩の事は信じてるよ?そこまで落ちぶれちゃいないさ。でも…この前のドラマみたいに肉食系女子に睡眠薬かなんかが入った飲み物か食べ物を口にして、起きて見たらラブホテルとかにいて、気づいたら大人の階段登っちゃってました☆…なんて事が起きたら…!!
「あー、作兵衛の妄想癖がうつったー…」
あーあ、おかしーな。
確か私ってもっとサバサバしてたと思うんだけどなあ。
一つも進まない参考書を閉じ、部屋を出る。階段を降り台所に入るとポットでお湯を沸かし、挽いたコーヒー豆とフィルターを取り出す。
悩んでもしょうがない、コーヒーでも飲んで落ち着こう。
お湯が沸くのを待っているとピンポーンと、よくある様なインターフォンの音が鳴り、玄関に向かった。
「やっほー勉強はかどってる?」
「えっ、尾浜先輩…なんで、」
「いやー、あんな事を言ってはみたけど逆に名前を動揺させちゃったかなーと思って。大丈夫、勉強の邪魔はしないよ!今日は家庭教師やってあげるつもりだから!」
ねっ?っと、笑った尾浜先輩の顔を見るのは実は久しぶりで、気恥ずかしくなった私は、赤い顔を隠しつつ、「どうぞ」とだけ言って尾浜先輩を家の中に通した。
「あっ、そうだ。ちょっと台所借りていい?」
「?どうぞ」
「先に部屋行っててね」
「はぁ……?」
言われた通り自分の部屋に戻り、尾浜先輩が来るのを待つ。
あああ、どうしたんだろう先輩。来るなんて聞いてなかったから私部屋着のまんまなんだけど。今から着替える…?いや、でも一度顔合わせてるから意識してる事がまる分かりだし…。家庭教師とかって言ってたけど台所に行っちゃったし。本当、どうして先輩うちになんか来たんだろう。
「お待たせ!はい、これでまた頑張ってね」
どうぞと言って差し出されたのはホットチョコだった。
そっか、これ作るのに台所…。
「……美味しいです」
「本当!?よかったあ。実ははじめて作ったからちょっと心配だったんだよね」
よかったーと言って、また笑顔になる先輩の表情に、また私の体温が上がった。
先輩、どれだけ私のツボを押さえているんだ…!!
「ありがとうございます。でも、なんでわざわざ…」
「ほら、今日ってバレンタインじゃん?でも名前は一ヶ月後に受験控えてるし。で、朝のニュースでちょうど逆チョコってのを見たから」
「それで、ホットチョコ…」
「これで、安心した?」
……あれだ、顔が熱いのはホットチョコがあっついからだ。
決して先輩の妖艶な雰囲気に呑まれた訳じゃない。
誰もが皆落ち着かない
「あっ、ホワイトデーのお返しはねえ……、」
「(……何要求されるんだ…)」
「合格通知!」
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個人的に勘ちゃんは犬系男子だと美味しい^^
たまにエロいともっと美味しい^^
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