「やっぱりおかしいな、」









酷い隈を更に酷くして困ったように訝しげるのは同級生であり、好敵手でもある潮江文次郎だった。奴があんなに悩んでいるのは珍しく、好奇心の勝った俺は何に対してそんなに悩んでいるのか聞きに行く事にした。



「四年生の人数が合わないんだ」


「はあ?」


「昨日、学園長の突然の思いつきで全学年対抗マラソン大会をしただろ?その時に先生方が話してたんだよ『四年生の人数が一人多い』って」


「で、数えてたのかよ。別にそのあふれた一人を見つければいい話じゃねーか」



再び考えこんでしまった文次郎を不思議に思いつつ、試しに自分も人数を数えてみる事にした。
一人、二人……そういや、田村達五人ってなんだかんだ言って揃うよな、



「……んだ」


「なんだよ、」


「誰が多いかわからないんだよ」





そんな馬鹿な、と笑い飛ばそうとも思ったが、文次郎のあまりにも真剣な表情に思わず言葉を失った。ここで冗談の一つでも言えれば良かったんだが言葉にならなず、代わりに一つ提案をだした。



「おい、田村三木ヱ門!」



文次郎の呼ぶ声に気付いたらしい田村は手にユリコを繋ぐ縄を握りながら足早にこちらにきた。



「潮江先輩」


「四年生って……人だよな?」


「はい、そうです」


「先生方がおっしゃるには人数が一人多いらしいんだ。昨日、集まったとき変な奴とかいなかったか?」


「いえ、いませんでした」


「俺が改めて数えたんだが、やっぱり一人多いんだ」




「先輩、それはきっと座敷童ですよ」



突然現れた声の持ち主は穴掘り小僧こと綾部喜八郎だった。今まで穴を掘っていたんだろう、制服のあちらこちらが土で汚れている。偶然通りかかったのだろう、滝夜叉丸と斎藤の姿もある。


「【四年生の人数が一人多いが誰かわからない】という噂は結構前から囁かれていまして、そこでこの平滝夜叉丸が成敗してくれようと調べあげたのです!ふっ……この成績も学園一優秀で武芸の腕も…(ry」


「タカ丸さんが借りた本に偶然載っていたのです」


「そ、そうなのか…」



またぐだくだと始まった滝夜叉丸のに、一切気にすることなくネタをばらしたのは綾部で、そのまま座敷童について説明しはじめる。


「座敷童とは… 悪戯好きで、小さな足跡を灰やさらし粉の上に残し、夜中に糸車を回す音を立てるともいわれ、奥座敷で御神楽のような音を立てて遊ぶことがあるそうです。また、子供と一緒に遊んだりもするとか。姿は家の者以外には見えず、子供には見えても、大人には見えないとする説もあって、子供たちの数を大人が数えると、本来の人数より1人多いが、大人には座敷童子がわからないので、誰が多いのかわからないといった話もあるそうです。」



「いやいや、だとしてもなぁ……」


「子供に見えるんだろ?だったら誰があふれてるなんてわかるだろ」


「まぁ、突然現れたのなら流石にわかりますがはじめから一緒にいたのであればわかりませんよ」



至極当然の様に言ってのけた綾部に思わずその場にいた全員が絶句した。
つまり、そんな得体の知れないものと生活を共にしているのに誰も、自分ですら何の疑問も抱かなかったなかったという事になるのだ。
なんとも言えない空気を変えようと、無理に笑顔を作り話題をふる。いや、ただ気づいてしまった疑問を消したかっただけかも知れない。



「そういえば、お前ら五人ってなんだかんだ言っていつも一緒にいるよなっ!」


「別に一緒にいたくているのではありません!この田村三木ヱ門があまりにも完璧すぎる私に嫉妬していちゃもんつけてくるので…」


「なんだと!?大体、嫉妬しているのは貴様の方だ平滝夜叉丸!!」

「とまぁ、言い争いしながら私の掘ったターコちゃんに落ちるので、成り行きで」



三者それぞれの言い分を言い終わるとまた始まる喧騒に、隣にいた文次郎が段々と眉間に皴を止せていく。その中、今まで黙っていた斎藤が口を開く。





「僕達いつも四人じゃなかったっけ…?」





嫌な予感を全員が感じ取った。



「いやいやタカ丸さん、何を言ってるんですか」


「そうですよタカ丸さん、滝夜叉丸の奴は別としていつも五人だったじゃないですか」


「なんだと!?」 「なんだよ…」



「僕に綾部くん、滝夜叉丸くんに田村三木ヱ門くん、ほら四人じゃない」



「待って下さいよ、アイツのことを忘れてるじゃ……あれ?」


「そうそう、アイツ……って、ん?」






「ねえ、滝ちゃんに三木ちゃん




















五人目の名前わかる?」


その時、誰のものかわからない子供の高い笑い声が響いた。

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綾部のちゃん付けは完全な俺得ですん
座敷わらしについては、小学生の頃読んだホラー小説とWikipedia先生からです




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