購買で購入した100円とちょっとするレモンティーを喉に流し込んで机にあったポッキーに手を伸ばした。期間限定と書いてあるパッケージの通り、甘い苺の味が口の中に広がる。ちらほらと見えるクラスメイトの楽しそうな会話を聞き、平和だなあと一言呟いた。それまで静かにプリントをやっていた伊作は突然顔を上げ、何やら面白そうなものを見つけた様な顔で言葉を発した。
「ねっ、もし未来と過去 どちらか一つを見られるようにしてあげるからさ どっちがいいって聞かれたらどっちにする?」
何の突拍子もないその質問に様子を伺うように横目で見ると、当の本人はニコニコと読めない表情で私の返事を待っている。
何々、いきなりどうしたのさ。
「んー、過去かな。人間ってさ、良かろうが悪かろうがその思い出を背負うことで、強く優しくなるんだと思うんだよね…『想い出』ってやつ?」
伊作は表情を変えずに質問を続ける。
「じゃあさ、腕も脚も口も耳も眼も心臓もおっぱいも鼻の穴も二つずつつけてあげるって言われたら?」
「そーだな、口は一つでいいかなー。私、口だけは達者だからさ絶対1人でケンカしちゃうもん。それに好きな人、1人だけとキスしたいしね」
へへっ、と笑い伊作の方を見るとなぜだか目をこれでもかというぐらい見開いて驚いていた。ちょっと、何か反応してくれないと私1人だけでクサイ事言って恥ずかしいじゃんか。ごまかすように、再びストローを口につけた。そんな態度が気に入らなかったのか、伊作は少し不機嫌な顔で仕方がなさそうに話を再開させた。
何、この理不尽。
「1番大事な心臓はさ、両胸につけてあげるからさ いいでしょう?」
いいでしょう?って、何がいいんだよ。というツッコミは胸の内に秘めといた。
本当、今日の伊作はどうしたのさ。何か本の影響?
「サービス精神旺盛なところ悪いけど右側の心臓はいいや。いつか私に好きな人ができて、その人を抱きしめたときに両側で鼓動鳴るのがちゃんとわかるように。それに、人って1人で生きて行けないんだよ」
言っいる本人が言うのもなんだけどさ、本当、恥ずかしい。
いい加減我慢出来なくなってきて目の男に真意を問いただそうかと思ったのだけれど、胸を押さえて、何かに堪えているようなそんな真剣な表情を前に、それまでぶつけようと思っていた言葉は消えていった。
「それじゃあ最後に1つだけ。『涙』をオプションでつけてあげようかって聞かれたら?」
「そうだね、つけて貰おうかな。私は大切な人と一緒に泣けるように。『大切』ってなんだかわかるように」
「じゃあ涙の味だけれど、好きな味を選んでよ。酸っぱくしたり しょっぱくしたり 辛くしたり 甘くしたり…どれでもいいから選んでよ
どれがいい?」
「私は…… 」
「ふぅーやっと終わった」
「ごめんね、時間とらせちゃって」
申し訳なさそうに笑う伊作にはさっきまでの雰囲気は全く消え去っていて、本来の彼が目の前にいた。そのことにどこか安心するのと同時に、なぜだか懐かしさを感じた。
あれ、もしかして、
「どっかで会ったことあったっけ?」
オーダーメイド
鞄を取りにいくと言った名前の姿を目で追い、完全に姿が見えなくなりると僕も放置されたプリントをしまい、帰りの支度を始めた。
400年前とは違い、平和な世に生まれて十数年、やっとの思いで再会した彼女は昔と何も変わっていなくて安心したのと同時に、僕の事を全く覚えていなかった事に絶望した。
あんなに酷い死に方をしたのに、あの世でした質問も今日した質問も同じようにこたえた君に少し嫉妬した。
君は昔と変わらず前に向かって歩んでいるのに、僕だけが君を助けられなかったあの時間に縛られている。
ねえ、君は僕に気づいてくれますか?
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山田様、リクエストありがとうございました。
大変遅くなってしまいましたが、伊作で転生切夢です。私と同じく山田様はRADWIMPSをお聴きになると伺っていましたので、曲にあわせて執筆しました。
RADWIMPS、良いですよね!
あの歌詞と曲調が大好きです。洋次郎さん大好きです!
長くなってしまいましたが、リクエストありがとうございました。
今後とも、透明人間をよろしくお願いいたします
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