「38度、完全に風邪ね」
「ケホッ……」
「今日一日大人しく寝てなさい」
母さんはそれだけ言うと額に冷えピタを張り、スポーツドリンクと薬を机に置き、部屋を出て小学校に電話を入れにいった。
喉がヒリヒリする。頭もなんだかいつもよりぼーっとするし、身体が本当に熱い。
原因はちゃんと理解している。
昨日、三郎と雷蔵、ハチに勘ちゃん達と一緒に川で遊んだから。別に遊ぶこと自体はそこまで問題じゃない。その後、調子に乗って濡れたままの姿で鬼ごっこだのなんだのしたせいだ。
「学校、行きたい……」
掠れた声で呟いてみても、返事が返ってくることなんかなくて、静まり返る部屋に孤独感を感じた。つまらない。
小学校に入学して、初めて出来た"友達"は今まで知らなかった事を教えてくれるし、一緒に遊んだりするのは楽しい。正直、勉強はつまらない(解るから)けれど、それも皆がいるからやる気だけは失う事がない。
「そう、いえば、」
名前ちゃんはちゃんと友達できたかな。
入学して以来クラスは別々になって、会うのはお互いの家か秘密基地だけ。たまに学校で見かけたりしても、多分同じクラスの子達と作った笑顔で笑っているのばかり。
その顔をみると、なんだか悲しくて辛くてどうしようもない気持ちになる。
本当は暖かくて、優しくて……もっとかわいいのに。
最近は僕の前でも泣きそうな顔で笑うから、寂しくて……、
段々と眠たくなってきて瞼が落ちてくる。完全に目を閉じたその拍子に、一筋の涙が零れた。
「おーい!くくちも一緒にやろーぜ!」
太陽みたいな笑顔を浮かべるあの子と、突然の声に驚く僕。
そして、少し離れたところで「行っておいでよ」と笑う名前ちゃん。でも、その笑顔はなぜだか悲しそうに見えて、僕は……
「………、」
「あっ、へーすけ起きた?」
ぼやける目を擦って起き上がろうとすると、まだ寝てなよと言われた。
可笑しいな、名前ちゃんがいる。
「な、んで……?」
「学校でね、プリント届けてくれって言われたんだー。それでへーすけのお家に来たらおばさんに会って、ちょっと買い物行かなきゃいけないからみててって頼まれたの」
「ふうん…」
ふと時計に目を向ければ学校の終わる時間はとうに過ぎていた。
お母さん…一度帰って来てたんだ…。
「あっ、そうだ、これへーすけのお友達から」
「…杏仁豆腐?」
「竹谷くんだっけ?給食に出たのを残しといてくれたんだって。これ食べて元気だせって、」
「はっちゃんが…?」
「あっ、大丈夫だよ。私とへーすけの事はバレてないから。」
冷蔵庫にいれといてあげるから寝てなよと、安心させるように僕の頭を一回撫でて部屋を出ようと扉に向かう。
早く学校、行きたいなぁ……それにしても、いっぱい寝たはずなのにまた眠くなってきた…。名前ちゃんに久々に会って安心したのかな…
「そうだ。何かもって来て欲しいものとかして欲しいこととかある?」
「笑って、」
ぼやけていく世界の隅っこで、目を見開き呆然としている名前ちゃんがいた。
そして、静かに涙を零しながら少しぎこちないけれど、あの頃の笑顔を浮かべたのを最後に僕は意識を手放した。
ーーーーーー
ど う や ら
オチが家出したようです。
リクエストされた藤様!
大変、お待たせいたしました!「復讐のススメで幼少期の久々知とのお話」です。リクエスト頂いた時、書きたいエピソードが沢山あって迷ってしまいました。(しかも夢主少ない…)なので、今回は小学校に入学して暫くした後のお話にしました。
手直し、修正のご要望は藤様のみ受付いたします!
今後ともこの"透明人間"をよろしくお願いいたします。
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[mokuji]
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