ガンガンと頭に響くアラームを止めて起き上がって見れば、既に太陽は真上まで昇っていた。
まだ覚醒しきらないまま起き上がり、部屋を出た。
階段を下りてリビングに入れば、何やら忙しそうに動き回る母さんの姿があった。
「休みだからってだらけ過ぎよ」
「お腹空いた」
「………もう、チャーハン作ってあるから自分でよそって食べて。もう出なきゃいけないから」
「うん、いってら〜」
バタンと玄関の閉まる音が響き、家の中の静けさが増した。 作ったばかりなのであろうチャーハンは、フライパンの中で美味しそうに湯気をたてている。なんだか、皿に出すのも面倒になって、スプーンを取り出して、そのままチャーハンの入ったフライパンを食卓に持って行った。
「お前っ、女なんだから皿に取り分けるとかしろよ…」
「どうせ全部食べるからいいんだよ。それより兵助くん、不法侵入って知ってる?」
「タイミングよくおばさんに許可を貰ったから問題はない」
いつの間に侵入したのか、我が物顔で私の向かいに座る兵助は、皮肉を言いつつも、スプーンを取り出して、フライパンからチャーハンを一口取った。
「私の朝食兼昼食」
「相変わらずおばさん料理上手いのな」
「一口300円」
「それより、それ食べ終わったら買い物に付き合えよ」
「買い物って……どうせ豆腐でしょ、」
「1時には家でるぞ」
ことごとく私の言葉を無視した挙げ句、また一口チャーハンを口に入れ、勝手にテレビのスイッチを入れた。
とりあえず、その横暴な態度に腹が立ったので、せめてもの仕返しにチャーハンをゆっくり食べ、出かける準備もできるだけ時間をかけてやった。
帽子を目深かに被り、電車を乗り継いでやって来たのはお隣りの県のちょっとした田舎町。
そこに兵助ご用達の豆腐屋さんはあった。
兵助が豆腐を買っている間は暇なので、周辺を探索する。どうせ豆腐屋さんのご主人と小一時間は喋っているだろうから少し遠目に行っても心配はない。
しばらく歩いて田園風景だけが広がるそこに見とれていると、小さな子供が二人やってきた。
「ゆうくんまって、まってよぉ!」
「はやくしろよ、なつみがとろいからおいてかれたんだろ!!」
「だ、だってゆうくんがいじわるするから……うわっ!!」
女の子のほうが転んでしまい、慌てて駆け寄った。その小さな体を持ち上げて立たせる。
うん、怪我はないね。
「こ、これだからなつみは……、」
「ふ、ぅ、ごめん、なさっ……」
「ほら、泣かない」
女の子…なつみと言った子は、また男の子に責められ、その大きな瞳から涙が溢れ出していた。
「あのさぁ、君、ゆうくんだっけ?そうやって意地悪しててもこの子は振り向いてくれないよ」
「ふぇ……?」
「うわああああ!!な、何言って、ふ、ふりむくとか、……!!」
「女の子振り向かせるんだったら、優しくしてあげなー」
ほれ、と背中を押せば、少しの沈黙の後、ゆうくんとやらから手を繋いでゆっくりとした歩調で歩いて行った。
「へいちゃん、」
「ほら、手つないであげるからはやくいこう」
「うん」
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