冷房のよく効いていたバスから一歩降りれば、湿気を含んだ熱気が一気に襲ってくる。もうすぐ梅雨入りだ。
さっさと学校に入ってしまおうと足を早めると、前方に見知った後ろ姿を見つけた。





「はーる!!」


「ひゃっ!…名前ちゃんか、ビックリしたぁ」


「だってビックリさせたんだもん」


「もー心臓に悪いよ〜」





そう言って柔らかく笑う春に、私もつられて笑った。
そのまま、昨日見たドラマの話とか今日の服装検査の事とかくだらない話をしていればいつの間にか学校の校門の近くに来ていた。





「おはよう」


「あ、立花先輩!おはようございます」


「おはようございまーす」


「もしかして服装検査もう始まっちゃってます?」


「いや、まだだ。ただ、お前らみたいに登校が早い奴らがいるからな、念のためだ」


「じゃあ、すぐ準備しますね。じゃあ、名前ちゃんあとでね」


「うん、教室で」





急ぐ様小走りで駆けていく春を手を振って見送れば、校門には立花先輩と私だけとなった。その場に先程までの穏やかな空気はなく、代わりに冷たい空気がヒンヤリと降りてくる。





「随分と早いんだな、生徒会でもないくせに。2年C組の苗字名前」


「お生憎さま、私バス通学なんで。3年A組の立花仙蔵生徒会長」


「よし、お前はいつも服装をしっかりしているな。もう行っていいぞ」


「そんな〜、生徒会長ともあろう人が職務放棄ですか。これはいいスキャンダルですね。早速新聞部に連絡しなきゃ」


「確か、この間教頭が大切にしていた帽子が美術室の彫刻に被せてあったそうだ。目撃情報によると2年女子と上がっているんだが……きっと犯人は人の恋路を邪魔する様な奴だろうな」


「えぇ、きっと絶対にくっつけたくないんだと思いますよ。そういえば潮江先輩がこの前、寝ている間に顔に酷い化粧をされていたそうですよ。きっと犯人は嘲笑いの似合う純粋とは程遠い鬼畜ですね」





「「……チッ、」」



お互い笑顔を崩して睨み合う。全く、朝から厄介な人に会ってしまった。
この立花先輩は春の事が好きなんだそうだが、どーもいけ好かない。表は爽やかイケメン生徒会長で通っているのだけれど、裏の顔は知る人ぞ知るドSで鬼畜な大魔王。
こんな奴に純粋な春はやれない。




「お待たせしました〜、…あれ?二人で仲良くお話ですか?」


「まさか!服装検査だよ、んじゃね、春」


「うん、またね」





今度こそ本当に別れる。
しばらくして振り返れば、頬を染めて楽しそうに立花先輩と会話する春がいた。










「あー…本当、腹立つ」







だから、嫌いなんだこの人の事は。







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