そこは固い壁に囲まれていて、何時もたくさんの本があった。
そこに行けば青い体をもつ巨人さんがいて、この持て余し過ぎる力の使い方を教えてくれた。
でも彼はどこか寂しそうで、だけれど"友達"の話をするときはいつも嬉しそうに話していた―――…
ふわりと空気の動く様に気づき目を擦りながら窓の方に目線を向ける。ちょうど逆光になっていて顔はわからないけど、きっとこの黒は彼なのであろう。
「よう、相変わらずよく寝てんな」
「ジュダル…久々ね……」
予想通りのその人物は挑発的な笑みを浮かべてふわりと部屋の中へ入ってきた。
「この間言ってたアレ……あと三日後だぜ」
「……"国民総奴隷化"とかいうふざけた調印式のこと…?」
「おいおい、大事なこと忘れてるぜ?お前が晴れて自由の身になる日、だろ」
まるで当然のように言って除けたジュダルは、そのままベットへダイブしニヤニヤと私の方へ目線を向けた。
ああ、なんて馬鹿馬鹿しいのだろう
「自由というのはね、何にも捕われず縛られない事をいうの。……煌帝国は、政略結婚を理由に私をがんじがらめにして閉じ込めるつもりなんでしょう?」
「だーかーらっ、俺と一緒に来いって!そうすりゃ結婚しなくてもいいし自由になれるんだぜ?」
「そうね、それが1番の解決方法かもね。でも結局は"貴方"を理由に縛られるのでしょう?……私はね、自分の意思で選び取るという自由を求めているの」
「…………」
「だから、そちらの皇子様には謝っておいてね……?」
笑って振り返るとジュダルは不満げにこちらを睨みつけていた。
それにね、と話を続ける。
「約束してるの、私を出してくれるって」
「おいおい、何年前の話してんだよ。そんなちっせー頃の口約束なんか相手が覚えてねーって」
「あら、そんなの分からないじゃない」
「ははっ、馬鹿みてーに信じてると後悔するぜ?」
「いいじゃない、初めての約束よ?馬鹿みたいに信じてみるのも」