………俺はスラムから来た汚いガキ。そんな俺を見る王宮の奴ら目の冷たいことってないさ。



―――俺は孤独だったよ。



その上、俺には毎日厳しい訓練が課せられた。

正直、学問も剣術も好きじゃなかったからつらかった。来たばかりの頃なんか寝付けなくて、よくベットから抜け出してたんだ。
あの日も王宮での孤独がつらくてベットから抜け出し、外れの城壁の方まで来た。


その時の俺は本当に辛くて苦しくて、思考が麻痺しててさ、目の前の城壁を仰ぎ見て「もう何もかも放り出して逃げちまうか」なーんて考えてたんだよ。

そしたらさ、声が聞こえたんだ。




「ねぇ、そこで何しているの?」





最初はさ、周りに人も見当たらねーし幽霊とかそういう類かと思ってビビったんだけどよ、その声に言われて、後ろの塔を見上げたんだ。



「やっと顔が見れた。私はナマエ、あなたの名前は?」



本当に、あの時は驚いた。なんせ俺より年下か同じくらいの女の子が塔の窓から嬉しそうにこっちを見てるもんだからさ。
王様に娘がいたなんて話聞いたことないし、そもそも王宮に女の子がいるだなんて話も聞いたことなかったからな。
どれくらいたったか知らないけど、俺は間抜けな顔晒してぼーっとそのナマエって子を見つめてたんだ。そしたら、段々不機嫌そうな顔になってきて、再度名前を問われた。




「え、えと、俺は…、アリババ、」

「そう……アリババ…あの王様が言っていたスラムの男の子ね!」

「………」

「それより何かお話をしてくれない?……そうね、あなたの事とか!」

「え、お、俺の事!?」





ビックリだろ?
誰もかも冷たい王宮の中で初めてそんな事を言われたんだ。俺の事知ってたくせに顔色一つ変えないんだ。それどころか、窓に肘をついて笑顔で俺が話始めるのを待ってるんだぜ。

単純なものでさ、

話し相手が出来た事に、久々の会話に嬉しくて夢中で話たよ。スラムでやってた遊び、書物の感想、下らない失敗談、ナマエも嬉しそうに相槌を打って、とにかく俺は話した。


その日からたまにだけどナマエの所に行くようになったんだ。
そしたらあんだけ辛くて仕方のなかった毎日が、ほんの少しだけ楽になってとにかくがんばってみようって思えるようになったよ。

もちろん俺が話すばかりじゃなくてナマエの話しも聞いた。今日読んだ書物、下女が連れて来てくれた小動物の話………ナマエ自身の話―――…、



ナマエは元々バルバットの人間ではなくてある国の王の娘、つまり姫君だった。
一年前、バルバットに連れて来られたナマエは人目をはばかる様にこの塔へ幽閉された。それでも最初のころは手紙とか届いてたからまだマシな方だった。それから半年、故郷であるその国が壊滅したという報告を受けるまでは。





「ねぇアリババ、私はねこの塔に幽閉されて確かに不自由な事ばかりだけれど自分を不幸だとは思った事はないの。きっと父さん……父様は私を守る為に友人であるここの王様に頼んだんだろうし、この塔にいなければ知ることが出来なかった事も知ることが出来た。それに、こうしてアリババにも出会えた」

「…………」

「それでもね、いつかはこの塔から出て、自分の足で大地を踏み締めたいというのが今のところの私の夢なの」

「じゃあさ、俺が出してやるよ!」

「そう……じゃあ約束よ!私待ってるから!」

「おう!!」





その数日後、事件は起きて俺は約束を果たせないまま王宮を出んだた。






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