天国にいるであろうおばあちゃん、お元気ですか?
私は元気です。今日も新作の苺のシフォンケーキを焼いたのでじゅんちゃんに届けにいく途中です。




……大変困った事になりました。








「うわあああん!」



「…………」








…迷子との遭遇です。



この制服…、確か大川幼稚園のだよね?周りに親御さんらしき人はいないし、やっぱり迷子か…。


とりあえず、怪しいおじさんとか寄って来る前に保護しておこうかな。

泣きじゃくる女の子の前に行き、目線の高さになるようしゃがみ込むと、女の子は一旦泣くのを止めた。








「どうしたの?」



「ひっく…、今日、かんちゃんがねお迎えだったんだけど、ねっ、こなくて、ひっく、ひより一人で帰ろうとしてね、うっ……」



「迷っちゃったんだね」



「ふっ、う、」



「偉いねー、一人で歩いてきたんだね」





ポケットタオルで女の子の涙を拭ってあげた。大川幼稚園っていえばうちの学校の系列の幼稚園なのだけれど、ここからはほど遠い場所にある。
それを、こんな小さな子一人でだなんて…心細かっただろうに……。











「じゃあ交番……「だめ!」





強い否定と共に弱々しい力で腕を引かれた。
私がびっくりした様子でその女の子を見ると、「あ、あの、」と、吃りながらも拙い言葉を紡ぐ。











「お、お巡りさんはおばさんが嫌いだから、だめ!かんちゃんも怒られちゃう!!」











「だ、だから…」と段々と視線を落とす女の子の頭を撫で、すっと立ち上がった。
女の子の手を取ってニッと笑う。






「じゃあ一緒にお家さがそっか」










「……うん!」











さあて、どこまで行けば見つかるかなお家。

























迷子の女の子…ひよりちゃんのお家を探す旅に出て早一時間、かんちゃんさん?という人も見つからず、通りかかった公園で持っていたシフォンケーキを食べつつ休憩タイムを取った。



「おねーちゃん、これおいしーね!」


「本当?」


「うん!おねーちゃん、まほー使いみたい!!」


「魔法使い?」


「だって、こんなおいしーの作れちゃんうんだもん」


「そっかぁ、魔法使いみたいかあ…」






ひよりちゃんの頭を撫でると擽ったそうに身じろいぐ。
魔法使いだったならどれだけよかったか…。
じゅんちゃんに献上するはすだったシフォンケーキは無くなってしまった。しかもドタキャンまでしてしまった。LINEで行けなくなった事を伝えたが、返事が怖くて通知切っちゃった☆


ああ、明日が怖い。


それより、ひよりちゃんのお家探しの旅はどうしたもんかと悩んでいると、突然ひよりちゃんが立ち上がった。





「どうし……「かんちゃん!!」





ああ、よかった。保護者が見つかったんだと安堵し、ひよりちゃんの走って行った方向を向いた瞬間私の笑顔は凍りついた。








「かんちゃん!」



「ひより、あーよかった!!ちょっと遅くなって幼稚園にお迎えに行ったらひよりいないからスッゴく焦った!もー、なんで幼稚園でちゃんと待ってなかったの、スッゴくスッゴく心配したんだから!!!」


「…ごめんなさい」


「一人で大丈夫だった?変なおじさんとかでなかった?怪我はない?」


「あのね、あのおねーちゃん、にね助けてもらってね、おいしーケーキ貰ったの!」


「えっ、おねーちゃん…?」

























「えっ、ななしさん……?」



「…………尾浜くん」





世間って狭いなあ…と思いました。



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