「うわっ、どうしたのその隈。潮江先輩みたいだよww」


「色々悩んでて寝れなかっただけだ、草生やすなうどん毛」



涙目になってまで笑う勘ちゃんにデコピンを一つお見舞いして席に着いた。

あのあと、三丁目の知り合いのおじさんがやっているトンカツ屋に駆け込んだ。トンカツ定食とオマケにつけてくれた味噌汁をやけ食いしたのだが脳裏からはあの映像が離れず、ふて寝してやろうと布団に潜ったのだが、目を閉じればエンドレス再生される始末。
布団の中で一人戦っていればいつの間にか窓から朝日がこんにちはしていた。



「おはよう、ナマエ。どうしたのだ?肌が豆腐の様に白いぞ」


「心配されてるはずなのに嬉しくない…」



相変わらずの豆腐脳な友人、兵助は不思議そうに首を傾げた。



「そうだ、本当は昨日食べなきゃいけなかったんだけど外食しちゃって食べらなんなかった揚げ豆腐があるんだけど食べる?」


「有り難く頂戴致します」


「へえー、珍しいね。雷蔵達と?」

「えっ、」



勘ちゃん……なんて答えにくい事を聞くんだ。
何も知らないとは言え、今の私にはボディーブロー喰らった気分だよ。



「いや、一人で…、なんか夕飯作るの面倒くさくなっちゃって」


「ふーん、珍しいねー」



私だって一人で外食したりするよ。もういいだろ、この話は。
だから、そんないかにも『何かあったの?』的な顔止めてもらえませんか、


……なんて事は言えないので、そっと別の会話にすり替える。

くそっ、このうどん野郎は変な所だけ勘がいいからな…勘右衛門だけに。(笑)
はい、ここ笑うところですよー。




















長い午前の授業も終わり、昼休みを告げる鐘が鳴る。
購買に戦いに(食料を手に入れに)駆け出していく人や教室外で食べる人が一気に教室から出ていく。


「あー腹減ったー」


「ごめんね遅くなっちゃって」


「はちはー?」


「焼きそばパンを巡って七松先輩と一騎打ち」


「あちゃーご愁傷様ー」



あー!!

このイベントを忘れていた!!!

ななしナマエ一生の不覚!!!!!



なんてこった…

近くの机から椅子を取ってくる幼なじみ兼根本的な原因の三郎と雷蔵の姿に思わずため息が出そうになる。

人が最も安心する食事をがたがた震えながら食べなければいけないのか…。胃に穴空くわ。その穴から食べたもの出て行って食べた気にならないよ。



「あれ、ナマエ隈出来てるよ?」


「うん、ちょっと寝れなくて」



君達のおかげでな。

引き攣りそうな口元を一生懸命抑えてなるべく笑顔で答える。


土井先生と胃痛同盟でも組もうかな。



「雷蔵、口にソースついてる」


「どこ?」


「ここ」


「………」


「ちょ、ナマエ、ハンバーグの刺し方怖い」



夫婦か、と突っ込んでしまった自分を殴り飛ばしたい。
どうしよう、行動全てがそういう風にしか見えない。
腕を抓り自分を戒めているとちょいちょいと袖を引っ張られた。



「ナマエ、揚げ豆腐」


「あ、忘れてた」



弁当から揚げ豆腐を取り出して何か皿になるものはないかと辺りを見回す。
うーん、弁当箱の蓋はしまっちゃったから出すの面倒だしなあ。



「じゃあ、はい、あーん」


「………」


「なっ、!」



面倒なので箸で掴んだまま兵助に揚げ豆腐を向けた。



「おい、何してっ!」


「何って、あーんだよ。別に友達同士だからいいでしょ」


「いや、そうじゃなくて…、」


「だめだ、寝不足で思考力がおかしくなってる」


「……」



本人ならまだしもなぜ三郎達が騒ぎ立てる必要がある?
うるさいなあと思いつつも、後がまた面倒なので渋々弁当の蓋を出していると、揚げ豆腐を持っている方の手を掴まれた。



「「「あっ、」」」


「ん、美味しい」


「本当?よかったー、醤油かけすぎたかなって思ってたんだよねー」


「兵助、お前なー!!!」



お怒りモードとなってしまった三郎にがっくがくと肩を揺らされている兵助は呑気にも「次は湯豆腐がいいなどと」呟いた。
そんないつもの雰囲気に心のどこかで安心したのか、視界がぼやけて段々と瞼が落ちてくるのがわかる。



「大体、ナマエ!お前もなんであーんなんか…私だってして貰ったこと……「三郎ー」


「なんだ勘右衛門!!」


「ナマエが寝てまーす!!!」

「なんだと!おい、起きろ!」



ぺしぺしと頭を叩かれるが、オールナイトした私の頭は睡魔に抵抗する力などなく、簡単に眠りについてしまった。




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