夢をみた。



すごく色褪せていた昔の思い出。
そこにいる幼い私は相変わらず何を考えているのか解らない顔で桜の木の下に立っていた。そこへ忍たまが一人、静かに涙を流しながら歩いてきた。その時、大きな風が吹き桜の花びらが舞い上がる。風で髪が靡き、目の前にいる忍たまが崩れ落ちる様に座り込む。
そして、二言三言言葉を交わす。
はっ、としたように目を見開き驚いた様に見上げるその忍たまに私はまた言葉をかける。

二人の間には雨が降るように桜の花びらが落ちてきた。














……、


「………ななし、」



聞き覚えのある声に薄く目を開き声の主を確かめる。きっと同じ組の久々知兵助だろう。身体を起こし、目線を上げれば予想通り呆れたとでも言いたそうに眉を寄せる久々知兵助がそこにいた。



「お前、こんなところで寝るなよ。風邪ひくだろ」


「ああ、別に寝るつもりはなかったんだ」


「次の授業、裏山で合同演習だろ。急がないと遅れるぞ」



もう、そんな時間だったのか。起こしてもらった礼を言い、共に集合場所である校庭へ急ぐ。
冬を越し、やっと春がやってきたのかずいぶんと緑が増えてきたものだ。きっと陽の光が暖かくなり、考え事をしていた為にうたた寝をしてしまい、偶然通りかかった久々知は、同じ組だからという理由で起こしてくれたのだろう。たいした接点もないため、そのぐらいしか思いつかないがたぶんあっていると思う。

だって、久々知は優しい奴だから。



校庭につけば、すでに四、五年生の殆どの生徒が集まっていた。いつもの四人を見つけたのか、久々知は一人歩いて行ったので、私も前の方へ足を進める。



「遅かったな」



突然話しかけられ、後ろを振り向くと長屋で同室の仲である鷹之慎が人の良さそうな笑みを浮かべていた。しかし、声は妙に弾んでいて、どこか浮足たっているようだった。周りの生徒も同じ様な様子で、はて、何かあっただろうかと首を傾げた。始業の鐘が鳴り先生方が現れ、自然と鎮まりかえる。
ちらりと視線をそらせば、葉の落ちた枝に芽が出ているのが見えた。
あと一月後には幼い新入生達も入学してくる。





ああ、後少しで進級するのか。






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