「さーぶろっ」  「三郎」



「父さん、母さん!」


よかった。俺ってば変な夢見てさ…なあ、なんでそんな所にいるんだよ。
……あれ、足が透けて…待ってよ、今いくから。くそっ、動けよ!動けよ!!



























「、夢……」



目を覚まし、入ってきた見慣れない風景にがっかりしたようにため息をついた。枕元に置いてあったTシャツと短パンに着替え布団を畳み、そのまま床にへたりこむ。
これからどうしようか。

することもなくそのまま座りこんでいると、甘い匂いが鼻を掠めた。すると途端に自己主張をはじめる自身の腹。そういえば葬式の後から何も食べていない。
とりあえず、このまま引き込もっているわけにもいかないので部屋を出る事にした。














「やあ、三郎君。おはよう良く眠れた?」


「………」


その人はクスクスと笑うと、フライパンからパンケーキみたいなものを皿に取った。それをテーブルに置き、俺に座るよう指示して自分もその向かい側に座る。



「お腹空いたでしょ。まぁ、ちょっと遅いんだけど朝ごはん」


「………いただきます」


「どうぞ」



ついさっき出来たばかりのそれは まだ熱が残っているらしく今だに湯気をたてていた。キラキラと光るベリーソースの掛かったそれは、甘酸っぱくて美味しかったのだけれど、感覚が麻痺しているのかなんにも感想が出てこなかった。そのまま事務的に皿から口に運ぶ作業を続けた。





「三郎君さあ、私の事お父さんとお母さんに聞いた?」


「いいえ」


「そっか。昔ね、君のお父さんとお母さんにちょっと助けて貰ったんだ」


「………」


「………」



その人が喋らなくなると途端に舞い降りる静寂。
すると、その女の人は組んでいた手を解いて、目を細めた。




「君さぁ、気にならないの?例えば…そう、君からしたら赤の他人な私が君を引き取った理由とか、私の事とかさ、」


「……どうでもいい、です」


「ふうん……まっ、いっか。」



さほど興味も無くなったのか、それ以上何かを聞いてくる事はなかった。そのかわりに、俺の食べていたパンケーキの皿に乗っていた苺を摘み、口に放り込んだ。





「食べ終わったら、君の身の回りのもの買いに行こうか」


「………」



なんでこの人は笑顔を止めないんだろう。



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