戦、戦、戦のまさに戦後時代。この世の中いつ、どこで、どのような状態で死ぬかもわからない。
明日の飯に困って死ぬかもしれない。戦に巻きこまれて死ぬかもしれない。恨みに思っている人に刺されて死ぬかもしれない。不慮の事故に遭って死ぬかもしれない……
「でも、そんななか愛する人に殺される私はなかなか幸せだと思わない?」
くるりと笑顔で振り返ると、静かに涙を流す勘右衛門と目が合った。
その手には苦無が握られていて、普通なら恐怖とか感じるんだろう。けれど、部屋に差し込む夕日が涙でキラキラと光っていて、呑気にも「きれい」と呟いた。
「本物のお姫様ならもうこの城の領内にはいないよ」
「なんで、……」
「きっとこれからは農民としてのんびりと生きて行くんだろうね」
「じゃあ、なんでここに#名前#がいるんだよ!!」
おかしいなあ。勘ちゃんには泣いて欲しくなかったのに。
涙を拭おうと腕を伸ばして見るけれど、普段着慣れない着物のせいかあと少しのところで手が届かない。
いつからこうなっちゃったんだろうね。
「見てよ勘右衛門。夕日が綺麗だよ」
「………、」
「故郷のさ、あの頃に見てた夕日を思い出すね」
何も知らず、無垢だったあの頃。無邪気に山を駆け回り、一緒にみた夕焼け。
外から目を逸らし、改めて勘ちゃんに視線を合わせる。
「本物の姫君じゃないのなら僕がここにいる意味はないよ」
「ううん、あるよ」
「だって…「私はさ、姫君と瓜二つなんだって。だから、私の首をもっていけばこの戦は終わるよ」
「いやだ……」
「だって、勘ちゃんの主がご所望なんでしょ?」
いやだいやだと首を振り続ける勘ちゃんに近き、とびっきりの笑顔を浮かべる。
お願いだから、泣かないでよ。
「私ね、勘ちゃんが来るまで考えてたの。例えば影武者なんかしてなくて普通に仕事しててね?戦か何かで誰かもわからない奴に殺されてさ、そこらの山か野でひとり寂しく終わりがやってくるのを待つの。それは、すごく怖くて寂しくて惨めで、そんな感じで死んでしまうの」
「……そんなの…酷い、よ…」
「だから、最期まで大好きな勘ちゃんに看取られなが死ねる私はなんて幸せなんだろうって、」
「……僕、は…」
「だからさ、お願い」
「………っ、」
とびっきりの笑顔を浮かべる。だって、好きな人には自分の1番いい顔を記憶に焼き付けて欲しいから。
勘ちゃんは私を壊れ物の様にそっと抱きしめ、苦無を首筋に宛がった。
オレンジの中に置いてきた結末
君を守りたくて強くなったのに、