※男主、BL注意
※転生設定
※流血、グロあり




















ぽっかりと丸く切り取られた夜空に見事に収まる満月に、呑気にも綺麗だなぁ、なんて言葉を漏らした。





自分で言うと虚しくなるが、私は相当馬鹿な男だと思う。





二ヶ月前、ちょうど手裏剣のテスト中に降ってきたのは、今や学園のスーパーアイドル、桜井愛さんだ。
あれよあれよという間に、学園で保護することになり、私は桜井さんのお世話係りに任命された。まあ、桜井さんはそれなりに可愛いかったしぃ?しかも絶対に会えない同郷の人だったしぃ?……その、あれだ、ちょっと…つか、かなり調子に乗った訳です……はい。
あー全く、なんであんなに調子ぶっこいてたかなぁ〜、途中から仕事全部私がやってたじゃん。気づけよ馬鹿、阿保。それにしてもさ、みんなも桜井さんに取り巻きやがってさ、私に一切気づかないしさ。なんだよ、何が桜井さんとお買い物だよ。文次郎、お前一度鏡で面見てこいよ。ぜってー、町でキャッキャッウフフする顔じゃねぇから。隈のお化けしか写ってないから!……あ、私もだ。…ダメだ、私結構うたれ弱い。誰か慰めて。




「あ、私しかいないんだった」




本当に馬鹿な自分を嘲笑えば、肺に血が入り込んで咳き込んだ。
そう、現在地は泣く子も黙る裏裏山のふっかぁーい穴の中。
いくら就職先が決まっていて、授業受けなくて暇だったからとはいえ、くの一教室の可愛い女の子達の般若はヤバかったし、何より後輩の涙には弱いんだわ、これが。だからさぁ、チキン精神丸出しで三週間分の勇気を振り絞って言ったのにさ。





「何?あんた傍観主?…はっ、それもここで終わりよ、だって私は天女様だもの!」


「すいまっせーん!!通訳ぅ、誰か通訳の人いませんかー!!!」


「キャアアアアア!!」


「ええええええええええええええ!?」


「「「「「「愛さん!!」」」」」」


「ストーカーかよ!!」





そこからも何やかんや早かった。
ちっくしょーあの性悪女、誰がみんな紹介してやったと思ってんだよ!!………って、私じゃん!!やっぱし馬鹿だ私。ただの馬鹿だ!
留三郎なんか鼻のした伸ばしやがってさ、おめーはペドのロリコンだったんじゃねーのかよ、変態!
つか、なんであの女に限って世話をしてやったんだろ。





……そうだよ、私と同じ思いをしてほしくなかったんだ、



怖かったんだ、

訳もわからず生まれ落ちたこの時代が、
この時代の両親が、
電気もないガスもない暗闇の夜が、
狂っていると言った村人達の目が、





あーやっべぇ、とうとう目が霞んで来やがった。血ィ流し過ぎた。
流石伊作だなぁ、穴の上からだってーのに、ちゃんと急所に苦無ぶっ刺しやがった。その点仙蔵は駄目だな。全然違う部分に刺さってやがる……これじゃ簡単に死なねえよ…なんだって?わざと?…ああ、うんわかってたよ。あいつS法委員会だし。
長次なんかこれみよがしに貸出カードなげやがって、紙って意外に痛いんだぞ!
小平太の馬鹿は動けねーってのに手足の骨折りやがるし…。まぁ、もう感覚がねえから痛くもないんだけどよ。
……でもお前らをこんなのにしちまったのは私なんだよなぁ。大丈夫だ、私がちゃんとお前らを元に戻してやるから。あの女が消えれば、ちょっとは頭も冷えて視野も広がるってもんだろ。……昔は死にたい死にたいって飽きもせず喚いてたんだ。それが叶ったと思えば……、










きり丸怒るだろうなぁ…アルバイトの約束してたし。
三郎次は泣くだろうなぁ。アイツ天の邪鬼だし。
数馬は…どうかな、呆れそうだ。
出来れば墓穴は綾部に掘って欲しいなぁ。アイツの穴は綺麗だから。





………竹谷は、泣いてくれるかな?どうせなら笑顔で見送って欲しいなぁ。
ああ、でも呆れて怒るかもしれないなぁ。もしかしたら六年の皆を責めるかも。
アイツらは悪くないんだよ。全部全部馬鹿な私が悪いんだ。だから下手な事はしないでくれよ頼むから。
あっ、話変わるけど、この前竹谷の団子食ったの私なんだ。でもその前に竹谷も私のまんじゅう食ったんだからお相子様だろ。
それと、うどん屋に行くって約束守れそうにないわ。悪い。でも行きたかったなぁ。うどん食って、それから裏裏山の湖まで行ってさ、昼寝でもして………、






「あー、やっぱし死にたくねぇなぁ…」






残念な事に、終わりはすぐ其処まで来ていた。


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