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そんなこんなで私はEU地獄へやってきた
仕事内容はやはり日本とはかなり違っていたけれどもこっちの仕事の方が簡単で、1日経てばすでに慣れた物になっていた
「ベルゼブブさん、こちら確認の印お願いします」
「あ、ああ…随分と早いな」
「まあ、いつもはこの倍以上の事をしていますからね。これでも少しはゆっくりしてた方なんですが」
「そうなのか…。そういえば気になっていたんだが、どうしてお前は普通の着物ではなくそんな男物の様なものを着ているんだ?」
「男性用…?ああ、袴の事ですか。確かに袴は男性の方の方が多いですが私が履いているのはちゃんとした女性物です。現代の物は行灯袴と呼ばれる長い巻きスカートのようなタイプが多いようですが、私のこれは男子同様の足を通す部分が二つに分かれたタイプのものです
何故かと聞かれますとやっぱり動きやすいからですかねえ
……呵責する時とか」
「日本人は働き過ぎだ…」
聞かれたので説明すると、元々良くはなさそうな顔色がさっと青くなっていった
ベルゼブブさんから新しい仕事を貰う。すると、コンコンと控えめなノックと共に随分とひらひらとしたお召し物を着た侍女悪魔さん達が香りのよい紅茶を運んで来られた
休憩のお邪魔かと思い部屋を出ようとすると引き止められる
「急ぎの仕事なわけではないんだ、まあ、その、ゆっくりしていくといい」
「私的には早く終わらせて部屋に帰る方がゆっくりできるんですけど」
「人の親切は素直に受けとれよ!!いいから休め仕事中毒者(ワーカホリック)!!!」
何故だか肩を掴んでまでして引き止めてくるベルゼブブさんに若干ドン引きしつつ、侍女悪魔さんの一人に紅茶をいただき、とりあえずソファに腰掛ける
「いい香りですね、アッサムですか?」
「おっ、詳しいのか?これは部下に現地まで取りに…「素人が聞きかじった程度ですよ
因みに私緑茶が飲みたい気分です」
「今から取りに行かせろってか」
「いえ、そんなつもりでは…わざわざ部下使って現地までって、EU地獄ってそんなに暇なんですか」
「暇じゃない、これはEU地獄の誇りの問題だ」
そんなドヤ顔で言われても反応に困るだけなんですがね
いまだ自分の世界に浸っているベルゼブブさんに気づかれないよう壁掛け時計にちらりと目線だけをやり、そろそろ仕事を理由に退却しようかとカップをソーサにおいた
「……ベルゼブブさん、一服盛りましたね……?」
「ああ、心配しなくてもただの痺れ薬だ。……ただ、即効性のものを規定の2杯以上使ったのになかなか変化が表れなくて焦った」
「極東の鬼神舐めないで下さいよ…こんなものぉぉぉよいしょおおおおお!!!」
「おおおお前、くくく薬がきいてるんじゃ…!!」
「こんなもの五轍した時に比べればなんてことないです」
「休めよ日本人!!!!!」
「でも、残念。つかまぁえた」
後ろから包み込む様に抱きつかれ首だけを向ければ、悪戯に成功したというような顔をしたレディ・リリスがいた
あ、これおもちゃにされるパターンだ
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