ところ変わって高天原デパートのとあるカフェ
ベタベタと隙あらば腰だの腕だのを組んでこようとしてくる白澤様をなんとか向かい側に座らせ、先ほど購入した広辞苑を渡し1ページ目からしっかり読むよう言い聞かせやっと楽しみにしていた本を読み始める






「……、」


「………」


「……あの、私じゃなくて広辞苑をみててくださいよ」


「ん?ああ、気にしないで」


「いや、気になるんですよ。広辞苑見てたほうが楽しいでしょうに」


「そんなことないよ、可愛い女の子はいつまで見てても飽きないものさ。それに、こんな一冊に乗ってる事ならここに入ってるし」



目を細めて頭を指で示す仕草になんだかイラッときて思わず額の目に角を指したくなった
いけないいけない…




「ところでさあ、今日休みなんでしょ?」


「ええ」


「じゃさあじゃさあ、今夜僕の家で飲もうよ!因みにそのままお泊まりなんかもどう?」



「先程一時間だけならお付き合いしますと言ったはずですが」


「え〜そうだっけ?」


「えっ…、大丈夫ですか……?あの、必要でしたらすぐにでもお医者様をお呼びしますけど…」


「名前ちゃんってちょいちょい僕に対して酷いよね…」


「そんなことありませんよ」 シレッ



本に栞をはさみ、注文していた紅茶を飲む
ストレートは茶葉の香りと葉そのものの味を楽しめて好きなのだけれど、私は少し甘めのミルクティーが好きだったりする

さて、おしゃべりしている間に読み続ける気が削がれてしまいました
どうやって、白澤様をあしらいつつ帰宅の途につきますかね


気づかれないように小さく溜息を付いた
すると聞こえてきた軽快なメロディーに、白澤様が白衣のポケットから携帯電話を取り出した



「あれ、桃タローくんからだ。ちょっとごめんね」


「私のことはお気になさらずどうぞ」




『白澤様、今魔女の谷から大量に注文が入りまして、俺だけでは作れないような薬もあって…一度は断ったんですけど、なんだか私の名前を出せば絶対作るはずだって……とにかく早く帰ってきてください!!!』


「…タイミングの悪い」


「何やら急を要するようですので私帰りますね」




どこのどなたかわかりませんがナイスタイミングです

自分の分のお題をテーブルに置き、何も聞こえない振りをして店を出た






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