締まりのない顔をより一層緩ませる閻魔大王の手には何十冊ものアルバムのようなもの
それがなんであるかおおよそ予想の付いた私は眉間に皺を寄せて思いっきり顔を顰めた














「しませんよ見合いなんて」


「そんな事言わずにちょっと見るだけでいいからさあ」


「おや、顔の横にゴミがついてますよ。機能を果たせないようでしたら取ってしまってもいいですよね」


「イタタタタタ!それ耳!!」


「全く何度言えばわかるんですか」



大王が落として散らばった見合い写真を拾い集め、近くにあったゴミ箱にまとめて勢いをつけ投げ捨てた



「ワシとしてはさァ、名前ちゃんには早く幸せになってもらいたいんだよね」


「そのお気持ちは嬉しいんですがそれが余計なお世話ってやつなんですよ」


「ワシだって早く第二の孫の顔が見たいの!!」


「大王の血縁になった覚えはありません。それに結婚するならちゃんと大王にご紹介するんで心配はご無用ですよ」



名前ちゃん…と涙を滲ませて何やら感激している大王にですからそう出来るよう仕事片付けてくださいねと溜まりに溜まった書類を渡す




「それより、鬼灯様が『私が戻られる前にそのタワーの三分の二程度は片付けて置かないと帰ってきたら尻を百回叩く』と仰ってましたよ」


「なにそれワシ聞いてないよ!!」


「(だって今言いましたから)その方が面白そうだなって…」


「どっちにしろ酷いけど逆だよ逆!!!」


「大丈夫ですよ。閻魔大王が本気を出せば鬼灯様が帰って来る5分前には終わるはずです」


「そ、そうかなあ……?」


「まあ、多分……」


「そこはせめてお世辞でも出来るって言ってよ!!」


好、極楽満月で〜す」




さて、閻魔大王をどうやってしずめ……静かにさせるかと思案していると扉の方から聞こえてきた呑気な中国語
配達に白澤様が来られるとはまた珍しい



「はい、ご注文の腰痛に効くお薬です」


「こんにちは、珍しいですね白澤様がいらっしゃるなんて」


「衆合地獄の方に用があったからね。そのついでに」



なんだいつも通り遊びに来ただけか



「白澤君!もお聞いてよ名前ちゃんがさっきっから酷いんだ!!」


「私は正直なだけです」


「その正直な心が酷いの!!!」


「……うん、まあ何となく想像出来たよ、」



白澤様の背に隠れ反論する大王なのだけれど、隠れるどころかはみ出している姿についつい携帯を出して写真を取ろうとしてしまった
あとで浄玻璃鏡から印刷しとこう


「ワシが用意した見合い写真は開きもせずに捨てちゃうし」


「まだ引っ張るかその話」



これに関しては昔から見合いなんかしないとお断りしているのにも関わらず縁談を持ってくる大王が悪い











「え、名前ちゃんお見合いするの?」



驚いたとばかりに目を見開く白澤様に私が驚いた
この人(?)の事だから逆に祝福してくるものだと思っていた



「しませんよ。結婚願望があるわけではないので」


「いや〜よかった。名前ちゃんが結婚しちゃったらもう遊べなくなっちゃうもんね〜」


「まあ、あなたと遊んだことなんてありませんけどね」



うん、期待したわけじゃないけど白澤様は白澤様だった
本当揺るぎないなこの人





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