「ねーちょっと聞いて!昨日うちに三郎くんって男の子が来たんだけどね、その子がもー本当に可愛くてね、そりゃあ顔がかわいいってのもあるんだけど一挙一動が本当かわいいの!本当は一緒に寝たかったんだけど何故か山本さん達に止められて…で、今日は帰ったら三郎くんとお買い物行くんだー!!」
「おい、その三郎ってのは一体幾つなんだ!!」
「10歳!いくら留くんがショタコンだからって三郎くんはダメだよ?あっ、写メ見る?」
「10つったら6歳差か…チッ、」
「留さん、見苦しい」
さっそく昨日激写した三郎くん秘蔵フォルダーから1番のお気に入り写真を探す。
いやー、スマホって便利!カメラに無声アプリとかあるんだもん。
「ほらほら、かわいいでしょー!」
「って、寝顔ってこれ盗撮じゃねーか」
「なにさ、自分だってしてるくせにー」
「いや、してねーよ?それからショタコンでもねえからな?」
ぎゃあぎゃあとうるさい留くんを他所に私と伊作くんは次の移動教室の準備を始める。
「その三郎くんってなんで雑渡さんのところに?」
「なんか雑渡さんの遠い遠い親戚の子なんだって。親戚をたらい回しにされててね、ほとんど押し付けに近い形で引きとって来たんだって」
「そうなんだ…」
「うん、でねちょっと気になることがあるんだけど…お願いがあるんだ」
伊作くんだけに聞こえるよう耳に近づけて話す。話し終えると、一瞬だけ悲しそうな顔をしてわかったよ、と頷いてくれた。
了承してくれた事に安心して笑みを溢すと伊作くんもつられて笑い返してくれた。
「たっだいまー!!!さっぶろうくーん!!!!」
鞄を玄関に投げ捨てて三郎くんの部屋に行くと、何故だか尊奈門くんと山本さんが部屋の前でウロウロしていた。
「何やってんの尊奈門くん、山本さん」
「帰ってたのか…いや、三郎くんが部屋から出て来なくてな…」
「……?朝、私の見送りに出てたじゃん」
「それからずっと部屋に閉じこもりっぱなしだ」
「ふーん…」
それで山本さんはオムライス持ってウロウロしてたのか…。
試しにドアノブを動かしてみる。
うん、鍵がかかっててるのか…。
ポケットからヘアピンを一本取り出し、鍵穴に入れてガチャガチャと動かす。
「お前っ、ピッキングなんかどこで覚えて…」
「雑渡さんに教えてもらったー。ピンシリンダーぐらいなら簡単に開けれるよ」
「組頭……」
カチッと音がして鍵が開いたのを確認し、ヘアピンを抜き取る。
ゆっくり扉を開くと部屋は真っ暗で、ベッドの脇に毛布に包まった小さな塊を見つけた。
「さっぶろうくん、ただいま。約束してたお買い物に行こうか」
「……うん、」
「あっ、そだ、朝から何も食べてないんだって?お腹空いてない?」
目を伏せて小さく頷いたのを確認して、山本さんに合図を送ってオムライスを持ってきて貰う。
「そのオムライスねえ、ここにいる山本さんが作ったんだよ。私では好きなんだ」
「………」
「じゃあ、私着替えてくるからその間に食べててね」
三郎くんの頭を撫でて部屋を出た。相変わらず尊奈門くんは心配そうにみていたけれど、大丈夫だという事を伝えるとホッと安心した顔をみせた。
「んじゃ、私も着替えこよー」
「あっ、こら!鞄、部屋に持っていきなさい!」
「へいへーい」
bkm