『ご希望通り帰ってやる』
「あなた何なの?」
目の前に立っている絶世の美女さん、でも忍たまな椿さんはその美しい顔を歪ませ、僕の事を睨んでいる。はぁ、何なのと言われましても。 ちり取り片手に口を開けて呆然と突っ立ている僕はよほどの間抜けに見えるだろう。
「逆ハーでなければ天女…女ですらない、BLでもないし転生でもない……まさか傍観だとでもいうの!?」
「ハー…?ぼーかん?」
「惚けないで!!」
いやいや、惚けないでと言われましても…。それ以前に日本語を話して下さいませんかねぇ。今時の若いもんの言葉は解らんよ、誰か広辞苑持ってきて。
「……傍観者は私よ、最後のその時までこの物語を楽しんで異端者に引っ掻き回されたこの学園を正しく導いて最後にはみんなが私を慕い崇めるの!!」
「それはそれは、ハードルの高けぇ目標で」
「まぁ、何もしないのならそれでいいけど……もし私の邪魔をするのなら………
元の世界に還してあげるわ」
流石、と言うべきか。
瞬きをした次の瞬間にはそこに彼女の姿はなかった。 それにしても彼女は元の世界へ戻る術を知っているんだろうか?だったらご希望通り帰ってやるからさっさと教えてほしいもんだ。
おっと、いけない。早く小松田さんにちり取りを届けねば。ちり取り一つにどんだけ時間かけてんだよって思われる。
「なんだか随分と時間がかかってたけど何かあった?」
「あー…えーと、途中あの忍たまの子…椿さん?って子に話掛けられて……すみません迷惑かけちゃいましたよね」
「ううん!!そんなことはないんだけど…ただ、大丈夫かなと思って……」
びっくりして顔を上げれば、小松田さんは竹の箒をぎゅっと強く握って、心配そうに僕の事を見ていた。 おかしい、おかしいよ。
「あ、ちり取りからはみ出てる」
「うわっ、ごめん!」
左京、この時代の人達は僕に対してみんな同じ表情を見せるんだ。 この時代の人達はおかしいよ。
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