『迷惑の原因でしかないのに……』

「右京ちゃん!!」

「あ、ヤバっ…」

「逃げるな!」



回れ右をして逃げようと足を踏み出す瞬間に、首筋に静電気の様な刺激が走った。その瞬間身体から力が抜け、いつの間に目の前に移動したのか、ガッシリと両肩を掴まれ、倒れるのだけは回避される。



「もう一度医務室に来るように言ったよね?」

「そ、そうだっけ……?」

「物忘れが酷いなら薬をあげるよ。まあ、新しく作ったやつだから副作用とかは解らない薬だけど」

「すみませんわざと行きませんでした



善法寺伊作くん」





素直に謝罪すれば、素早く横抱きにされ、移動しながらお説教が始まる。謝ったのに……!!
力の入らない身体のままされるがままにしていれば、いつの間にか医務室の前に。





「ち、ちょっと待って!!僕まだ仕事が……」

「吉野先生が、『怪我人なんか役に立ちませんからちゃんと治してきなさい』って 」

「……はい」



やっぱり言われてしまった。
ただでさえこの学園にお邪魔させて貰って、しかも迷惑の原因でしかないのに……。





「ところで身体が全く動かないんだけど…」

「右京ちゃん、針って知ってる?もちろん裁縫の方のじゃない方の」

「…………」



この人はどれだけ医療スペックが高いんだろう。
それ以上聞いてしまうのはなんだか怖いので、大人しく治療を受けた。



「…どうして来なかったの?」

「僕なんかのために包帯を使うのは勿体ないと思った、から……伊作くん?」


「………」



急に俯いて小さく震え出した伊作くんに驚いて、呼び掛ける。
どうしよう、やっぱり僕なんかに貴重な包帯を使ってしまったから……。





「それ、本気で言ってるの……?」


「本気も何も、僕は人間以下の存在だもの」























手を開いたり握ったりして動作確認をする。
すごいなぁ、伊作くんは。

あの後、何とも言えないような表情になった伊作くんにいくらかの質問をされ、治療は終了した。
また、治療用だという長い針で首筋を刺されると、元通り動く様になり、こうして廊下を歩いている。





「「あ、右京さん!!」」

「きり丸くん乱太郎くん、どうしたの?」

「綾部先輩が六年の先輩達に何か言われてて、先輩達は殴りそうな雰囲気で、」

「先生方の方にはしんべヱが行ってるんですけど、早くしないと危ない状況で、」







「わかった。案内してくれる?」





―――――

すみません、針については詳しい事はなんにも知りません…



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