『良いこと思いついちゃった☆』

「助けてー!!」





ぽっかりと切り取られた空へと手を伸ばして声を張り上げた。
しかしその手は空を切り、声は誰の耳にも届く事なく響いた。

あーあ、全くツイてない。

いつもだったらどこかの組が自習だったり、実習だったりしてそれについていくのだけれど、今日は運悪く、どの組も座学の授業中だった。
やることもないし、そろそろあの忍たまの女もウザくなってきた所だしぃ?たまにはお仕事でもしようかななんて思ったら落とし穴に落ちちゃうとかほーんと、ツイてない。
きっと喜八郎のターコちゃんね。どうしようかしら、仙蔵に頼んで叱って貰うのもアリだけど…喜八郎ってば恥ずかしがっちゃってまだ会ったこと、ないんだよねー。



「そうだっ、仙蔵と一緒に行けばいいじゃない!!」



ふふっ、愛香ってばあったまいー!!
そうと決まったら早く誰かに助けて貰わなきゃ。出来れば留三郎か仙蔵がいいなぁ。小平太でもいいんだけど、塹壕掘りとかに付き合わされちゃ構わないもの。
もう一度声を出そうと見上げると、影が指した。やった、誰か助けに来たのね!






「誰かいますかー?」





ひょこっと見せた顔は私の後に来た男だか女だかわからない卯月右京だった。
私嫌いなのよね、コイツ。私の分まで仕事してくれるのは嬉しいけどコイツ、一年生の子達とか三年生の子達とか私の虜にしようと思ってる子達を周りに侍らしてるから本当にムカつく。皆に好かれる天女様は私だけでいいのよ!


そうだ、良いこと思いついちゃった☆





「ゴメンなさい、ほんの少し穴が深くて出られないの。引き上げてくれない?」

「え、ああ、天女さんか。腕伸ばすんで掴まって下さい」

「ええ、ありがとうっ!!」

「え、うわっ!!!」



少しばかり大きい穴でよかったぁ。隣に落ちてきた卯月右京が立ち上がろうと膝をついた所を見逃さずにその背中に足をかける。



「…ッ、!」

「ありがとっ、貴女のおかげで出れたわ!」





地上に出ればこっちのもの、あの子だってこの私の踏み台になれたのよ。
それに、少しお灸を据えるぐらい許されるはずよ。







早く授業が終わらないかなぁ。






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