『ったく、まだ子供のくせに』
「「「では、行ってきまーす!!!」」」
「遅くならないうちに帰ります」
本日のお仕事は、用事で出掛けなければならなくなった食堂のおばちゃんの代わりに食材の買い出しだ。 この辺の土地に慣れてない私のために、(と、いうか私の見張りか)乱太郎くんきり丸くんしんベヱくんがお供してくれるそうだ。 学園から出てから、荷車を引く私の隣を歌いながら歩く三人は癒しだ。
「あーあ、それにしてもお使いが右京さんで本当に良かったぜ」
「なんで?」
「だって、あの五年の先輩も天女様も同じ事いうんだぜ?」
「同じ事……?」
「こらきりちゃん!!!」
せっかく乱太郎くんが厳しい顔で制してくれたのだけれど、僕の好奇心の方が勝ってしまい、きり丸くんに尋ねてしまった。
「まるでわかってるみたいに『かわいそう』とか『大変だったね』って」
そういえば、きり丸くんは戦災孤児だったっけ。あまりにも普通に過ごしているからつい忘れていた。
「ほら、町見えて来たッスよ!」
呼ばれて顔を上げれば、この時代で始めての町が見えていた。 元の時代にはなかったお店なんかもあって、少し胸が躍る。
乱太郎くん達にお使いのメモに書いてある食材を買ってもらい、頼まれたお使いも無事に終わった。 お腹が空いたというしんべヱくんの希望もあり、この町1番のお団子屋さんにきた。
「三人ともありがとう、一人二本までなら奢ってあげよう!!」
「奢りぃ〜!!」
「やったぁ〜!!」
嬉々として団子を頼むきり丸くんとしんべヱくん。やっぱり子供はこうでなくちゃね。
「あれ、乱太郎くんは頼まないの?」
「その、いいんですか…?右京さんってお給料貰ってないって聞いたんですけど……」
「あー、大丈夫大丈夫。どうせ学園長先生から貰ったお駄賃だから」
「だったら……!!」
「ガキが遠慮しないのー、頼まないのなら勝手に頼んどくよ?…すみませーん、この唐辛子だん…「うわあああ!自分で頼みます!!」
慌て選ぶ乱太郎くんに思わず笑みが零れた。たく、まだ子供のくせにいっちょ前に遠慮しちゃって。 運ばれてきた団子を口に入れて空を見上げた。
あー……、空が蒼い。
「あれ、乱太郎くん達?」
声のした方へ顔を向ければ、驚いたという様な顔をした天女さんがいた。その周りには、通行の邪魔だというのに六年生と五年生の一部の方達がいて、何やら争っている様である。
「どうしたの、お使い?アルバイト?」
「ああ、おばちゃんに頼まれてお使いを……」
「きり丸くんはまだ小さいのに偉いねー、そのお手伝いをしてあげてる乱太郎くんとしんべヱくんも」
あらら、僕のことは完全にフェードアウトの様だ。 いつの間にか六年生とその他の皆さんの喧騒は収まっていて、何故だか睨まれている。
「そうだ!!頑張ってるご褒美にこれ、こんぺいとうだよ。甘いもの好きでしょ?」
「……いやー、今虫歯になってて甘いもの食べれないんスよ。気持ちだけ受けとっときます」
「じ、じゃあ、お使いの途中なんで私達はこれで……」
「え、」
「あ、待ってよぉ!乱太郎、きり丸!!」
いきなり駆け出して行ったきり丸くんを追う様に乱太郎くんは走り去ってしまった。 天女さん達に頭を下げてから、追い付けていないしんべヱくんを荷車に乗せて僕も追いかけた。
蒼かった空はいつの間にか暗くなっていた。
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