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「たかすぎん」 「あ?」 「おめでとうございます」 てなわけでどーぞ、と彼女が差し出してきたものをありがたく頂きながらおう、とだけ答える。それから机の中へ突っ込んだ大量の無機物の存在を思い出して思わずそれらを改めて奥の方へと押し込んだ。別にやましい物ではない、のだが、彼女に見せるのは気が引けるというかなんというか。いややましいどころか寧ろ喜ぶべき物なわけだが。とりあえず食べ物と疑わしき無機物たちはすべてチャイナ娘に処理してもらったので安心して一日中放置しておける。というか、だ。なんで今日に限って出校日なのかを誰か教えてくれ。 「今年は校長の都合で10日らしいよたかすぎん」 「…まじでか」 いつか殺す。あの校長。 去年も一昨年も出校日は7月の後半と8月の真ん中の二回、今年は一回だけらしいよと噂で耳にして喜んだのはいいがまさか俺の誕生日だとはとんだぬか喜びだ。お陰で登校早々名前も学年も知らない女たちからプレゼントと称した嫌がらせのような無機物の嵐、やっとの思いで教室に辿り着いたものの机の上にも勝手に置いていったのであろう無機物たちが我が物顔で鎮座していて無性に帰りたくなった。誕生日が夏休みの真っ最中ってところが唯一の救いだったというのになんという悲劇。毎年毎年今日の俺と同じように大量の無機物で囲まれた土方や沖田をげらげら笑っていたのが無効になってしまった。現に進行形でモテモテだねィぶふふっとかなんとかにやにや沖田に笑われている最中でもある。あの野郎2年越しの嫌がらせか。 「まあ、ありがとな」 「うん。一生懸命選んだ」 「…っ!」 どきどき、と心臓が不自然に脈打つ。普段そういった思わせ振りな言葉を誰にも口にしない彼女に不覚にもときめいてしまった。情けなくも動揺して震える指先で綺麗にラッピングされた俺にとっての正真正銘のプレゼントをがさがさと解く。びりびりびり、と雑にラッピングを剥がし、て、 「ちょ、おまっ、安上がりにも程があるだろうが…!」 「え?安くないよそれ」 「お〜いお茶のお値段はどうしたって120円じゃねーかアアア!」 思わず叫びながら力強く握り締めていたラッピングの紙くずをべしっと机に叩き付けた。一瞬でも舞い上がった自分まじで死ね。はずい。やべ、俺キモイ。とかぶちぶち考えながら右手を陣取っているプレゼントと称されたお〜いお茶(しかも缶)をじっとりと眺めた。誕生日だからって、彼女がちょっと思わせ振りな態度をとったからって調子に乗るから期待するからこうなるんだ馬鹿か俺は。
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