「沖田さん沖田さんあのですね、わたし常々思いながらも今まで口に出すことを幾度となく憚ってきたわけなのですよ、何故なら言う必要がないと思っていたからですけれども今日は、今回は是非とも言わせて頂きたい」
「なんでィ」
「あなた馬鹿ですか」
 どたどたと部屋まで走ってきたと思ったら唐突にそんなことを言いやがる自分の部下に総悟が目を白黒させる。まてまて。出だしから馬鹿って話が全くもって掴めないぞとか思いながら、はあ。と疲れたように深々と溜め息しやがるいろを半眼で睨みやった。溜め息吐きたいのはこっちなんですけどという言葉が喉元まで出かかったが、けれどもそれを口にするとなんだか負けたような気がするので言わない。何に負けるのか、と問われると特に答えられないわけだが。兎に角今日の沖田総悟という男は踏んだり蹴ったりで、更に言えばすっ転ばされたり体当たりを喰らわされたりしているわけであって丁度正午を越えた辺りの今までを朝から総合的に分析すると早い話が厄日なのである。
「ちょ、うぜェ。看病する気がねェんだったらさっさと帰りなせェ。目障りいだだだだだ!!」
「うざいのはどっちですか人の計画ぶち壊しといて。悪魔のようだ」
「こいつっ…悪魔だ…!」
 ちきしょーありえねえええ、といろにどつかれた右腕を庇いながら総悟が悶絶する。うるせーですよ沖田さん、とか白々しくあからさまな殺意を言葉に滲ませながらいろの手が脇に避けられていたお粥に伸びた。まだ熱いそれをぶっかけるぞとでも言わんばかりに構える。
「もう看病する気も起こりません。むしろ危害を加えたい全力で」
「…」
 あり得ない程の無表情でじっと此方を見詰めてくるいろにいたたまれなくなってふっと視線を逃がす。ちら、と視界に入り込んだカレンダーには今日の日付にぐりぐりと赤丸が書き込まれていてもうなんだか少しというか盛大に泣きたいような衝動に駆られた。なんたって、なんたってこんな日に、
「誕生日に熱出して骨折って楽しいですか」
「…」
 悲しいかな、朝起きた途端感じた気だるさと体がうまく動かせないふわふわとした感覚。うそんもしかしてこれ、となんとなく頭の片隅を過ったもののいやいやそんなはずないよ大丈夫だよ、と無理矢理朝稽古に参加した結果が右腕骨折全治三ヶ月だった。総悟のためにといろが組んだ予定も局長主催のお誕生日会もすべてパー。


 






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