今まで付き合った女たちは大概前日になると明日は好きなものあげる、何が欲しい?だとか、明日はあたしの家に来てね、ご飯用意するから。だとか。何かしらアクションを起こして俺の気を引くものだった。いつもは暴言を吐きまくっている神楽さえその日1日だけはやたらと気を遣ってくれる、ちょっと楽しい日なのだが。
「ネェネェ、なんか忘れてない?」
 けれども目の前の彼女にはどうやらそれが通用しないらしい。今も箸を片手に携帯電話をぽちぽち触りながらそう?だなんて余裕綽々に返事をしやがる。彼女は可愛いくせに愛想がないというか媚びるという女の魅力を最大限に使った大技を知らないというか、そもそもそんな大技をやる気がないというか。彼女のそういうサッパリとしたところに惚れた俺が言うのもなんだけれどちょっと切ない。いつもクールなんだから1日くらいデレてくれないかな。うわ、それって物凄く萌える気がする。あれ、俺何言ってんだ。
「阿伏兎どうしよう。どっかのとっしーに感染したみたいなんだけど」
「んだとゴルァア」
 瞳孔全開の土方がマヨネーズ片手に此方を睨み付けてくる。瞳孔と同じように殺気も全開らしいが残念なことに彼の手にしっかり握り締められたマヨネーズが見事にその雰囲気をぶち壊していてなんだか笑えた。土方が此方へ意識を向けているこの隙にここぞとばかりに土方の弁当へ七味をぶっかけている総悟が見えたけど面白いから放っておこう。
「ねえ阿伏兎ー、オツキアイって一緒にお昼食べたりするものじゃないのかなー、なんで神楽が彼氏の俺を差し置いて一緒にお昼食べてるのかなー意味解んないんだけどねえ阿伏兎ってばアアア」
「いでで!今日だけだろうが!昨日も一昨日もその1ヶ月前も2ヶ月前もおたくら一緒に飯食ってただろ!」
「だって神楽がどや顔してくるんだヨ、なんなのあの勝ち誇ったようなどす黒い笑顔」
「面白いくらいお前さんにそっくりだぜ、まあ飯は諦めて一人であだだだだだだ!!」
 髪を掴むなこのスットコドッコイ!となんだか涙目のような気がしないでもない阿伏兎へごめんネーとだけ謝ってちらりと彼女の方へ視線を投げる。気が付けば彼女の周りには神楽の他に志村妙とストーカー(という名のさっちゃん)が増えていてちょっと羨ましくなった。無理やり神楽との間に割って入ろうと思ったけどあんなに女ばっかりだと逆に追い出されるのでやめておこう。特に志村妙は逆らうと恐ろしいことを仕出かすので実のところあまり逆らいたくはなかったりする。


 






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