瞳孔、というのは人間の目ん玉になくてはならないそれはそれは大切な機能で、光だけでなく色を見ることに関しても瞳孔は忙しく伸縮を繰り返しているらしい。そしてそんな大切な瞳孔が開きっぱなしというのは世間では一般的に死んだということになるのだ。"一般的"には。けれども万年瞳孔全開ある種の開眼状態である彼にはその世間一般がどうも通用しないらしい、何故なら彼は瞳孔が常に全開だというのに生きているのである。ふむ、謎だ。
「お前さ、なんで、」
 もごもごと至極言いにくそうにとっしーが言葉を濁す。言ってはいけないことを言ってはいけないことだと忘れてをついうっかり途中まで口に出してしまったというような、そんな感じ。やっぱいい、とごまかすようにひらひら手を振ってその場から消え去ろうとしたとっしーの手を逃がすまいと掴んだ。と思ったら総悟がとっしーにタックルをかました。が為にあたしの手は寂しく空気を掴んだ。なんだこの連鎖、と思った瞬間とっしーが派手に床とハグをかます。激しく打ち付けたらしい額からゴッとかいうなんだか殺人的な音が響いた。
「ふははは背中ががら空きでィ土方」
 ダメージが大きいのかなかなか起き上がらないとっしーをかなりあからさまに見下す総悟がちょっとかっこいい。なんで3Zには無駄にイケメンが多いんだろう、銀魂高校の不思議。じゃなくて。
「…とっしー気絶してね?」
「え、まじでか」



 いだだだ、あり得ねえ総悟のやつぜってェ殺す。とか言いながらとっしーがのそりと起き上がったのはあれから10分以上も後だった。あれだけ派手な音を響かせた額は言わずもがな派手に腫れ上がっていてかなり痛々しいわけで、けれども前髪がぎりぎり目にかかる長さなだけあって冷えピタを貼るためにかき分けたそれを戻せばいつものとっしーだった。オンザ冷えピタされた姿が新鮮で可愛らしくてなんかきゅんきゅんする。
「さて話が続きだったよね」
「…は、あ?」
「お前さ、なんで、はい続き」
「はあっ?」
 あからさまにうろたえるとっしーの顔色が急速に悪くなる。整った顔が引きつってただでさえ全開の瞳孔が更に大きく開いたような気がした。なんだろう、そんなに不味いことでも口走ったのだろうか。なんかこんなにも言うことを拒絶されると軽くヘコむというかなんというか。お前さ、なんで、…なんでそんなに顔面へ障害を抱えているのですか?うわ、考えただけで泣きたくなってくる。
「…や、あの、な、」
 がしがし、と困ったように黒髪を右手で控え目に掻き回す。


 






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