君と別れてからまだ1ヶ月と一週間しか経っていないのですね。
「り、理由を聞いても、」
「いや、俺にもよく解らねえんだわこれが」
 ぼりぼりとまったくもって収まりの悪い髪の毛を掻き回す。別れ話など別れる前にくだらない理由で4度やったが(しかも別れる気なんて欠片もなかった)、最後の5度目だけは何故か理由なんてなくて嫌にすっぱり終わってしまった。ねえ別れようさようなら。それきり黙り込んでしまった君に、いつものとぼけるという名の忍法記憶喪失も通用しないと悟って素直に頷いたのを覚えている。君が俺をどう思おうが例えばもういやだとか思おうが俺は一向に構わなくて、嫌われようが俺は兎に角君の幸せを願わなければ、と思った。だから俺と別れることで君が、新しい人と出会って君が幸せになれるのなら、
「えっ、そ、それで別れちゃったんですかっ?」
 まあ、とか言いながら耳をほじる。別れようって言ったのは俺じゃなくてさよならって言ったのは俺じゃなくて、悲しいのも泣きたいのも全部俺だったはずなのに君は泣き出してしまって荷物をまとめて出て行ってしまったのだ。ねえすべて君が切り出したのになんで泣いたの。
「ぎ、銀さんそれ、彼女さん本気で言ったんじゃないですよ、」
「…は?」
「引き留めて欲しかったんですよ、きっと」
 俺の元に戻ってきたら俺を起こして。いつも通りに寝ているから、君が来るまで寝ているから、だからだから戻ってきて下さい。わがままですができればいやだなんて言わずにお願いします、いやだなんて言われたら俺はもう死ぬしかないわけで、詰まり。
「…ドンマイっつって自分にキスしたい気分だ」
「なんですかそれ」
 君がまだ大好きで仕方がないってことなんです。



05410‐(ん)




 戻ってきて戻ってきて、今すぐ此処に戻ってきて。窓から身を乗り出して叫びたいくらい後悔しているけれど君の気持ちに気付けないまま頷いてしまった俺にはそうやって叫ぶ権利もないので、いつか君が此処にいつ戻ってきてもいいように俺は此処で君のために君を待とうと思います。



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企画「おかずのごはん」様に提出∩^ω^∩
楽しかったです、ありがとうございました!


 






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