ホワイトデーというものはバレンタインデー定着後に福岡市のお菓子店が割と勝手に制定したもので、由来は白いマシュマロをチョコレートのお返しに渡すからなのだそうだ。君からもらったチョコレートを僕の心(という名のマシュマロ)で包んでお返しするよという意味合いらしい。馬鹿か。とはいえ今ではマシュマロに代わってクッキーが主流となっているわけだが。
「いろ、お返しだ」
 土方のヤローが綺麗にラッピングされた箱をぽいっと投げる。ありがととっしー!とか言いながら笑顔でそれを受け取るいろにやつの口元がほんのり緩んだ。死ね土方。とはいえこういう俗っぽい行事にあまり積極的ではないあんちくしょうが昨日ホワイトデーの菓子を必死に選んでいたのだと思うと死ぬほど笑える。
「いろちゃんこれお返し」
「ありがとさがるん!」
 続々といろの机の上にバレンタインを貰った男子生徒諸君のお返しが増える。志村姉やチャイナとはバレンタイン当日に友チョコの交換でお返しが成立しているのでホワイトデーはなし(志村姉は黒い何か、チャイナは言わずもがな酢昆布なので圧倒的にいろが損をしているわけだが)、先程ちらりと教室に現れた銀八もいろへお返しを渡していったので机の上には既に俺を抜いた6人分のお返しが揃っていた。まじのお返しなのか社交辞令なのかは知らないがどちらにせよそんなことは今の俺にはどうだっていいわけで。いや気にはなるけれども。とりあえず今日の俺は違うのである。色んな意味で。
「いろー、お返しやりまさァ」
「ありがとー!」
 うきうきと貰ったお返しのラッピングを雑に解こうとしていたいろへ土方と同じく昨日買いに行ったお返しを突き付ける。珍しく悩み抜いて買ったそれの中身はモロゾフのチョコレート、店へ行ったはいいがなんか馬鹿みたいに種類があったので一時間ほどショーケースとにらめっこをかましてしまった。暇か俺。
 チョコレートには恋愛物質とやらが豊富に含まれていて擬似恋愛状態にさせることができる。というのは1ヶ月前に俺がいろへ力説した話。その手の話には興味がないのか相手にしてもらえなかったけれども。今回のお返しはその効力とやらを乱用したいがためにチョコレートを選んだわけで実はかなり割と一世一代の賭けだったりするわけで、詰まり。だ。もう二度と俺をバレンタインのリストから漏らさないための一番手っ取り早い方法なのである。というのは少なからず語弊があるので正直に白状しよう、いろが好きで仕方がないのです。



さあ!俺に惚れるがいい!




「あれ、近藤くんと新八以外みんなチョコだ」
 小首を傾げながら不思議そうに呟いたいろの机の上にはクッキー(メガネ)と何故かマシュマロ(近藤さん・意味はないと思われる)と四箱のチョコレート菓子がずらりと並んでいた。とりあえず山崎から順にシメてやろう。俺といろの話聞いてやがったなあいつら。


 






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