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「つーわけでそろそろ歌唱指導入るぞー。音楽の先生パス」 ひらひらと先生がだるそうに手を振る。手に持っていたマイクを幾分か雑に机へ放るといつも通り着ているよれよれの白衣へ手を突っ込んだ。ああ、この姿も今日で最後なんだ、って。 「あーおーげーばーとおーとしー、わがーしのーおんー」 卒業生が音楽の先生のピアノに合わせて歌う。なんだかZ組だけ音の外れ具合が著しいのは気のせいだろうか。隣の神楽から力いっぱい音程の外れた仰げば尊しが聞こえてきて思わず吹き出した。背中しか見えない総悟はきっと口パクなんだろうなとか、真面目なヅラは元気いっぱい歌ってるんだろうなとか、ゴリくんは妙を振り返らなくなったからもしかして泣いているのかもしれない、とか。 「おしーえのーにわーにもーはやーいくーとせー」 考え始めたらなんだか悲しくなってきてやっぱり帰りたくなった。だって卒業したくないし予行練習もしたくない、一生懸命作った卒業アルバムのクラスページは見たいけどまだ卒業には早すぎるんです。私たちはまだ大人になれそうもない。総悟はこの後も教室でとっしーにちょっかいをかけて、ゴリくんは妙に目一杯アタックしてぶん殴られて、さがるんは相変わらず地味で、長谷川くんも相変わらずマダオで、新八はお通ちゃんのライブで頭がいっぱいで、神楽は私のお菓子をたかりにきて、きゅうちゃんもついでに来たりして、さっちゃんとは鬼絡みして、ヅラはエリザベスが大好きで、そうやっていつも通りに半日を過ごして。 「おもーえばーいとーとしいー、このーとしーつきいー」 いつも通りに帰っていくんだ。土日はいつも通りにバイトなんかしちゃったりして、メールしちゃったりして、それで。 「いまーこそーわーかー、れーめー」 3月1日になってしまうんだ。
「いざー、さらーあばー、」
じゃん、とピアノが終わる。二番に入る前に音楽の先生の指導が次々に言葉になる。あんなにビブラートきくわけねーだろ、と呟くと目の前のさがるんが思い切り吹き出した。
巣立っていく私たちは
うるせーぞ山崎、ととっしーがさがるんをどつく。あーもー何このクラス、ほんと大好き。卒業式なんてくそくらえ。
‐‐‐‐‐ 今の気持ちを詰め込んでみました 卒業したくねえええ(^p^)!
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