「なんだヨ。寝かせろヨ」
 毎日思っていたのに。
「卒業したくないよおーう」
 吐息混じりに吐き出したその言葉に神楽が私もアル、と。こっくり深く、頷いた。
 最初に声をかけたのは神楽。いつも一人で楽しいアルか、遠慮しないでこっちくればいいネ。三年間で100冊読破を目論んでいた私は一年生の一学期後半からすっかり本を読まなくなった。神楽と仲良くなってついでに総悟とも仲良くなって、妙とも新八とも仲良しになって。気付いたらゴリくんに妙の相談をされるようになってるしなんか慰めてたし、しばらく平和だったけど初めて神楽と喧嘩をして悩んで先生に相談をして初めてまともに話をした。瞳孔全開で何故か趣味がぴたりと合うとっしーが有り得ないくらい(多分生理的に)大嫌いだったのに、体育祭の準備から急に打ち解けて絡むようになってA組の田中と付き合って別れてとっしーに相談してたらなんか付き合うことになって。気付いたらZ組のみんなが大好きだった。
「こら二年生ー。きゃいきゃい騒ぐなコノヤロー、先生は早く帰りたいんですう」
「坂田先生真面目にやって下さい」
「スミマセン」
 あーあ怒られてらァ、と総悟がげらげら笑いながらついでにとっしーの脇腹を思い切りどつく。総悟てめァアアア!!!!と叫ぶ被害者とっしーにヘドロ様の雷が降った(うるさいですよと優しく諭されただけなんだけれども)。結局は何をしても他クラスより浮いてしまうZ組、最初は嫌で嫌で仕方がなかったのに三年も経てばいい加減慣れてしまったらしい。とはいえいつも通りのこの光景もこれで見納め、なのだ。卒業式にはみんな馬鹿みたいに真面目になって制服をかっちりと着込んで校歌を歌って卒業証書を貰って、
「やべ、本番泣きそうアル」
 多分、泣いて。
 早く卒業したいと言っていた私はどこに行ってしまったのだろうなんて探してみるけれど、もう、どこにもいなかった。卒業が嫌で寂しくて仕方がない、のだ。今は。まだみんなで遊んでいたい。大人でも子供でもない微妙な立ち位置に突っ立ったまま、その狭い距離の中でできる精一杯の遊びをまだまだみんなとしたいのに。それにさっちゃんとはまだ遊び足りない。やっと仲良くなった頃にはもう三年生だった。こんなに気が合うのならきっともっと早くから仲良くなれたに違いないのに私たちはやっぱり馬鹿だ。でもそれがZ組なわけで。
 喧嘩は全力、体育祭も全力。なんだかんだ言って優しくて人思いなそんなクラス。


 






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