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「好きな食べ物なんだっけ」 「唐揚げ」 「もっと好きなもの」 「鶏の餡掛けだねィ」 結局は唐揚げじゃねーかと彼女が半眼でこちらを睨みやる。いや一番好きなのはお前なんだけどなと胸中で呟きつつ唐揚げ面倒くさいなあとむにむに悩んでいる彼女の横顔を見つめた。まあお前がおかずになってくれるのならご飯50杯は軽いと思うわけだけれども、言うと彼女の性格上確実に実行させられるので絶対に言わない(というのも彼女が有言実行者なためである。一度それで失敗をした)。因みにおかずという表現は比喩的表現なのであって別に変な意味合いではないことを解ってほしい。いやまじで。嫌いにならないで下さい。 「あーもーなんであんな可愛いんでィあいつ死ね土方あああ」 「お前とことんうぜえやつだな」 彼女が俺の隣の席からチャイナのもとへと向かったのを見届けてばしばしばしと持っていたノートで前の席に座っている土方の頭を無遠慮に殴る。さして本気で殴っていたわけでもないので呆気なく腕を掴まれて阻止されたがそんなこと今の俺にはどうだっていいのだ。哀れな土方にこの幸せを一握り程分けてやってもいいくらい幸せです。「心の声が口から漏れ出てるぞテメエ。なんだ哀れな土方って」やっべつい口が緩んじまった。 「明日弁当くれるらしいんでさァ」 「そりゃよかったな」 適当に相槌を打ちながらヤングマガジンを読み始めた土方を思い切り小突く。という名の肘鉄を喰らわせる。いってえ!と叫ぶ土方にいつもは優越感が込み上げくるのだけれども、今日ばかりは明日の弁当への幸福感で優越感など微塵も感じられなかった。すげーピュアだ俺。 「も、なんか、こんなに好きでいいんですかねィ」 「お前がいいならいいんだろうが。つーか俺を巻き込むんじゃねえよ」 「どうも泣かせたことの方が多い気がしやす」 「聞けよ」 あんなことやこんなことを強要し過ぎて俺の家に来る度に泣いていた気がする。もーやだ総悟嫌い帰る。えぐえぐ泣く彼女についうっかりムラムラしてしまって半ば無理やりうっふんあっはんなことをしたことも多々ある。いやそれは可愛さあまってというやつなので致し方ないのだから俺は悪くないはず「お前が悪いだろ」死ね土方。 「しかも嬉し泣きって必殺技があるんでさァ。それをされた日にはもう」 「お前がいかにサディスティックで変態的な思考の持ち主なのかは十分解ったからこれ以上あいつを辱めるのはやめろ」
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