「土方さんはっぴーばーすでーい!」
 言ってにこにこ笑いながら渡されたのは誕生日プレゼントと称されたマヨネーズと子供用の菓子が詰まった鯉幟。鯉幟を串刺しにしている棒の中には砂糖の塊が大量に収まっていて、その先にくっついている黄色い飾りが蓋の代わりに中身を窮屈に閉じ込めていた。煙草をくわえたままぼうっとしてそれを眺め、これだけかと言いたげな視線を寄越してふっと煙を交えながら吐息する。誕生日に好いものをやると言うから期待してみれば。
「マヨネーズと菓子かよ」
「好きですよね」
「マヨネーズだけな」
 あからさまに不機嫌な土方の視線をにこにこの笑顔ではね飛ばすいろは、ふと何か思い出したようにポケットへ手をやってごそごそと中を探った。首を傾げる土方をよそに目当てのものを見つけたのかそれをポケットから引っ張り出し、それからにこにこの笑顔を更ににっこりさせてポケットから取り出したものをマヨネーズに結び付ける。「むふふ。プレゼントっぽくなりましたよー」という言葉に土方が溜め息した。
 真選組始まって以来の女隊士であるいろは、なんというか掴み所がない。いつもふわふわゆらゆらしていて何を考えているのか皆目見当もつかない兎に角マイペースな女だ。入隊してしばらく経つが未だに性格や行動パターンを把握しきれていない。その上更に言えば既に許容量オーバー、彼女を理解出来る気がしないわけで。だから今のこの行動も、土方の理解力を削げ落とすには十分すぎる要素だった。
「土方さん?」
「…いや」
 苦い顔をする土方の顔を覗き込み、マヨネーズに結び付けたピンク色のリボンをちょいちょいとつつく。にま、と笑うとじゃあ大広間行ってきますとか言って隊服の裾をひらめかせながら走って行ってしまった。それをぼんやり見送りながらふっと煙を吐き出してがしがしと頭をかき回す。相変わらずいろは掴めない、去年はプレゼントもおめでとうもなく誕生日すら忘れていたというのに。
 ふわりと風が吹いてピンク色のリボンが揺れた。とりあえずは大広間で開かれるらしい誕生日パーティーに主役として出向こうか、折角なのだからこれを機会に隊士たちの気休めをさせるのも悪くない。



「と、いうことで。乾杯ィイイ!」
 そう言う近藤さんは例の如く素っ裸、たった今乾杯の音頭をとったところだというのに既にボルテージは最高潮。どうしたらこんなにあがるんだ、どうしたら初っ端から脱ぐという選択肢にぶち当たるんだ。


 






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