今現在の日付、2月26日。閏年ではない今年はあと三回も寝れば3月1日、つまり卒業式に到達する。
「卒業生、起立」
 そのやる気のない声に合わせてみんなが立ち上がる。ゴリくんがちらちらと妙を振り返っているのが私の立ち位置からではよく伺えた。本当に好きなんだなあって思っておかしくてなんだか笑えてくる(なんか妙の笑顔が死ぬほど怖いけど)。
 校長が人外生物なこんな学校入学するつもりなどさらさらなかった。それでも生憎と頭の出来は残念な仕上がりなわけで、第一志望をきれいにすべった私は第二志望の銀魂高校に受かってしまったものだから仕方なく入学。私立に入るという選択肢は家の経済面からいって端から無い。入学後に振り分けられたZというクラスはやたら個性派揃いで常に荒れていてうるさくて、担任もなんだか目が死んだ魚のそれに近くて糖尿に片足突っ込んだ甘党な天パでやる気ゼロで兎に角馴染める気が微塵もしなかった。中学校が同じ子は二人いたけど仲がいいわけでもないしクラスも違うから接点は皆無。別に銀魂高校へ入りたくて入ったわけじゃないし、むしろ入りたくなかったから友達を作らずに卒業してやろうって決めてた。本を読んでいれば三年間なんて直ぐに終わる。
「えー、ここで先生が合図を出します。したらみんなで頭下げろー」
 だらだらとスピーカーから相変わらずやる気のない声がマイクを通って体育館に流れ出る。隣を見やれば神楽が立ったまま器用に眠りこけていたのでこつこつと肘でつついて起こしてやった。
 最初の一学期は本ばっかり読んでクラスに馴染む努力なんて少しもしなくて、もう真面目を演じようと思っていたのにどしょっぱつの授業で携帯を鳴らした。初めての授業だからみんな少しだけ大人しくて音がよく響いたのを覚えている。英語の授業だったなあ、とか。それから今度こそ真面目を演じるつもりだったのに五時間目にまた鳴らして没収されかけたり。端から私には真面目が似合わなかったのだ。みんなそれで私が真面目ではないことに薄々感づいていたというのは後々聞いた話。
「ちょ、寝かせてくれヨ、すげー眠いんだヨ」
「ばっかやろう。こっちだってすげー帰りたいんだよおおお!」
「…そもそも来たのがとんだ間違いだったアル」
「まじだ」
 くあ、と二人同時に欠伸をかます。早く卒業式にならないかなあ、この学校にいたくない。とか。
「かぐらあああー、」
 なんだこのクラス。馬鹿みたいだ。とか。


 






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -