五歳になった我が家の神威は真似したい時期に突入したようです。
「まーまー、銀さんのジャンプ取ってー!」
「まーまー、かむさんの絵本取ってー!」
「自分で取ってこいいい!!」
 ええー!とか若干オーバーに、それでも二人で練習したんじゃないだろうかという位のぴったりなタイミングで叫ぶ。噫やっぱり親子だなとか客観的に見てしみじみ思いつつ、こちとら最近膨らんできた腹抱えて洗濯物たとんでるんだよコノヤローと不満を胸中で噛み潰した。というかかむさんって誰ですか神威くん。
 右手で頭を支えながら横の腹を下にして寝転がっている銀ちゃんの視線が媚びるように此方へ向けられる。その後ろで同じように多分真似して寝転がっていた神威もそれを見て此方へ媚びるような視線を向けた。なんて奴。真似とはいえ銀ちゃんより可愛いに決まってるじゃないか。というかこの年で媚びるという大技を覚えてしまった神威の将来がほんの少しだけお母さんは心配です。
「はいはい…」
 仕方ないなあ、よいしょ。と我ながらおばさんじみた台詞を吐いて重たいお腹に左手を補助で添えつつ右手を床へついて立ち上がろうとする。急速に増えた体重に私の気持ちがついて行けないようで立ち上がるという簡単な動作が既に重労働だった。お腹自体はそんなに膨れてはいないもののやっぱり重たい。立ち上がったはいいもののよたよたと体が傾いでしまって危うく転びそうになりながら壁へ体を預けた。噫、疲れた。
「…悪ィ」
 そういえばとばつの悪そうな顔をしながら銀ちゃんが急いでこちらへ寄ってきて私をもう一度座らせる。神威もばたばたと走り寄ってきて銀ちゃんと一緒に私のお腹を撫でた。どうやら妊娠という現象について行けていないのは私だけではないようで二人とも私が妊婦だとすっかり忘れていたらしい。よしよしとお腹を撫でる二人の姿があまりにも似ていてつい笑ってしまう。
「神威は銀ちゃんに似てきたね」
「ぱぱに似ても嬉しくないヨ、死んだ魚の目なんていやだからネ」
 神威の言葉にそういうことじゃないんだけどなあと苦笑しながら見上げた銀ちゃんは複雑な表情をして笑った。そういえば死んだ魚の目なんて言葉どこで覚えたんだろうかという疑問はすぐに見当が付いたのであえて突っ込まない。
「ちょ、大串くん!神威に変なこと吹き込まないでよね!」
『大串じゃねえ!総悟が教えたんだよ!』
「ちょっとおおお!!お宅の子供の教育しっかりして下さいよォオオ!!」


 






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