髪をかきあげるとするすると特徴的な色のそれが指をすり抜けていった。最近はすっかり三つ編みにしなくなったなあなんて髪をいじっているといつもその髪を三つ編みにしてくれていたいろを思い出してしまって

『それだけ遠く

 なんだか。

それだけ遠く

 泣きたくなった。

君が行つてしまつただけさ』

 ずき、と痛くなった心臓と、頬に垂れたそれはきっと気のせいに違いないと自分に言い聞かせて

それだけなんだ、それだけなんだ。

 俺は逃げるように意識を遮断した。



銀河のさかな、あいたいよ

 次の日。朝方考えた方法を実行するためにまた手紙を書く。それを四つ折りにして阿伏兎の用意したカゴへ。

届かぬ想い、届けたくて。

 書いた言葉はいつも同じの「はやくおいで」、手っ取り早く簡潔に伝えた方がはやく会えるような気がするのは俺だけかな。兎に角。会いたいんだ。

サーカトーヴォのおさない気球に

 きっと紙飛行機よりも遠く上に行ってくれる。ほんの少しだけ期待をしてもう一枚、「まってるよ」と書いた紙を最後に入れた。それからこれも阿伏兎の用意した風船をたくさん繋げて簡単な気球にする。

ありったけの想い。のせて放つ

 春雨の機体の上からそれを空に飛ばした。

ひさひさと浮かぶそれは
まるでイツカの―

「…団長」

はじめからね、
気球(こんなもの)じゃ

「なあに、阿伏兎」


 






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