銀河のさかな、あいたいよ

 あの日からずっと、同じ星にいる。いろが死んだ、いろの血が染み込んだ同じ場所に。周りの死体は既に腐り果てて酷い臭いを放っていたけれど特に気にはならない。
 俺はがさがさとポケットに突っ込んでいた紙とペンを取り出して適当にペンを走らせた。

届かぬ想い、届けたくて。

 ここにいればいろに会えるような気がして仕方がなくて、いつもいるから君もいつも通り会いに来てよって思いを伝えたくて。「はやくおいで」とだけ書いた白い紙をあぐらをかいた膝の上で紙飛行機にする。それが最近の俺の日課になっていた。

カワゲェーテの紙飛行機に

 いつもと同じ形に仕上がったそれは自分の折り紙に関する知識の無さをありありと物語っていたけれど、どっちにしろ調べる気も折り方を覚える気もないので構わずに右手にかまえる。

ありったけの想い。のせて放つ

 軽く手首を捻って明るい空へ飛ばした。
ゆるり弧を描いたそれは
ぽたり、と落ちた。

 けれど何回やってもそれはすぐに地面へ落ちてしまって手紙としての役割を果たしてはくれない。俺は空へ、いろのいる空へ飛ばして言葉を届けたいのに。

はじめからね、
紙飛行機(こんなもの)じゃ

 落ちた紙飛行機を拾ってすぐ近くにその機体を降ろしている春雨の中へと戻る。紙飛行機はそろそろやめて、次はもう少し遠くへ行ってくれそうなものを考えようかなとか思いながらぐしゃりと丸めた紙飛行機を自室のゴミ箱へ捨てた。

届くはずないこと知ってたんだ

 独りじゃ無駄に大きいベッドに寝転がって天井を見つめながら何がいいのかをぼんやり考える。


 






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