「鬼!」
「えへ」
 言葉の割にいろの目が真剣でなんだか泣きたくなった。
「坂田さんもしかしてお菓子の用意ないの?」
「へっ?」
 思わず声が裏返ってしまった自分の喉を激しく呪う。バレるじゃないか、無いってことが。とりあえず悪戯を決行されるのは本気で御免被るので無意味にごそごそとポケットを探った。その間いろがかなり怪訝そうな目で銀時をそれこそ穴が開くほど見つめていたが思い切り無視をかます。若干慌てながらポケットの奥の奥まで指を突っ込むとこつんと指先に何かが当たり、しっかりそれを掴んで形を確認するとほっと銀時が心底安堵したように吐息した。ポケットから引っ張り出していろへ突き出すよいにグーにしたままの右手を差し出す。
「残念。キャンディがありました」
「ええー。食べれるのー?」
 ころん、と今度は間違っても自分のお菓子が取られないように右手でそれを受け取って不満たらたらにぷっと頬を膨らませながら銀時を見つめる。「折角坂田さんには悪戯できると思ったのに」とか言うあたり確実に銀時のあの反応でお菓子が無いと判断していたことがよく解った。残念でしたー。とか大人気なくいいながらにやりと銀時が笑っていろを見上げる。
「いいけどさーあ」
 相変わらずぷっと頬を膨らませたままいろは銀時に背を向ける形で床に座り込むと目の前の机に籠をひっくり返した。ばらばらと散らばった色々な種類のお菓子は銀時を釘付けにさせる。ひとつくらいくれよ、とかいうかなり大人気ない思考を脳内で盛大に展開しながら諦めたように深々と吐息した時だった。
「はい、これ坂田さんの」
「…え?」
 言いながら机の脇に寄せられた坂田さんのという振り分けをされたお菓子の山をぽかんとした表情で見やる。いろは先程の不満そうな表情をほんの少しだけ照れたように赤らめてにっこり笑い、もしかしたらお菓子の山より嬉しいかもしれない言葉を簡単に銀時へ吐き出した。
「坂田さん甘いもの好きだから欲しいかなと思って、倍もらってあげたよ」
 その笑顔と言葉。に。なんだか目眩がしそうで。



Trick or Trick!




 そんな可愛い貴女へ悪戯をしてもいいですか(性欲的な意味で)!


 






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