「trick or treat!」
「…は?」
「は?じゃなああい!お菓子か悪戯か!」
「え?ちょちょちょいろちゃん。え、何。なんなの?」
 ぽかんとしながら目の前でお菓子を強請る何故か魔女のコスプレをしたいろを見上げる。がばりと開いた胸元は惜しげもなく肌と谷間を露出し、超ミニのくせにスリットの入ったスカートからはガーターベルトがちらちらしていてなんだか物凄く不謹慎だった。なんだこの大サービスとか思いながら銀時はずいっと小さな手で差し出されたかぼちゃ型の籠のような入れ物を覗き込む。瞬間、ぱっと表情が明るくなって中身を無許可に掴み出そうとした。ら、いろに取り上げられるという悲劇。むっとしながらいろを見上げる。
「ちっがーう!坂田さんが私にあげるの!」
「え、何そのイベント。寧ろ俺が欲しいんだけど」
「駄目だよ坂田さん大人だもん」
「いろちゃんちょっとそれなんの差別?俺だって心は少年のままだぞ」
 むくれたまま机の上に置かれていたいちご牛乳をパックに直接口を付けてぐびりと飲み込む。それから座っているソファーにぐったりともたれかかる銀時を見て不思議そうにいろが小首を傾げた。その様子から坂田銀時は今日がなんの日か知らないのではないかと不意に思い付いて、ポケットに入れていた四つ折りの紙切れをがさがさと引っ張り出す。それを丁寧に開いくと銀時の目の前へ思い切り突き出した。
「今日ははろうぃんだよ?」
「…はろうぃん?」
 言いながら紙切れをいろから受け取って黒とオレンジを基調に作成された文章をさらりと読む。
 でかでかと一番上に書かれた言葉は"歌舞伎町はろうぃんパーティー"、内容は18歳までの子供が仮装をして家を訪ね歩いてお菓子を貰うというもの。銀時にしてみれば素敵すぎる企画だったが、残念なことにいろの言った通り大人は渡し役だった。そういえば昨日そんなようなことを下のババアが言っていたなとか今更思い出す。目の前でにこにこしているいろは可愛かったが生憎とこの家にお菓子は無いわけで。悪戯、とやらが決行されてしまう。
「因みにいろちゃんはどのような悪戯を…」
「いちご牛乳に何時の間にかわさびが一本分溶かし入れてあるか、坂田さんが知らないうちにジャンプの全ページをホッチキスでとめるか嫌な方を選ばせてあげる」


 






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -