寂しいと嘆くこの心を、どうすればいい?お前がいなきゃお前がここに、いてくれなくちゃ。寂しいと訴えて心臓が泣く。ずきりずきりと体を蝕む。だからどうか、お願いです。貴女の一生を僕にください。



「ふく、ちょ、」
 がたがたと震える体を思い切り抱き締める。細くて白い首筋に顔をうめてその匂いを堪能した。彼女はいつもいい香りがする。その香りにあてられて今まで何度も衝動的に犯してしまいたくなったが、けれどそんな行為するだけ虚しくなることを知っていた。繋がってもたった数分数時間。それじゃあ足りない。それじゃあ、愛がない。繋がるのなら、永遠。一生。ひとつにならなくては意味がない。
「お前の一生を、俺にくれ」
 正当にお願いをしつつ更に強く抱き締める。息苦しいのか此方の体を押し戻そうと小さな両手で突っ張ってみせるが力の弱い彼女のそれは無意味に等しく、されでも抵抗する姿が酷く愛おしく見えた。震えている。細い体も、声。も。
「や、やめてください副長、私には、ちゃんと、」
「知ってるよ、恋人だろ?放っとけそんなもの」
 べろりと首筋を舐めあげればひっ、と小さく鳴いてびくりと体が強張る。噫、いい。その反応。壊したくなる。でも、そんなことはしない。だって意味なんてない、から。
 するすると右手を彼女の体から自分の腰へぶら下がっている刀へと伸ばしつつ再び首筋に顔をうめる。それからできるだけ優しく、穏やかに耳元でゆっくりと囁いた。

「誰よりもずっと一緒にいてやる。だから俺とひとつになりませんか」

「…え、?」
 彼女の口から答えが出る前にぐさりと抜刀したそれを腹へ思い切り突き立てる。ぼだぼだ、と彼女の綺麗な赤色が畳へ飛び散った。



心壊モノフォビア




 噫、嗚呼。これでやっとずっと一緒、だ。まずどこから刻もうか、やっぱり顔は最後にしよう。手、足、胸、腹。筋肉も骨も、肉も皮も。すべて俺の一部になるよ、なんて素晴らしいんだろう。もう寂しくはないよ彼女とひとつになれるのだから。彼女が俺の中で溶かされて体の隅々へ運ばれるだなんて考えただけでぞくりとした。大丈夫大丈夫全部綺麗に食べてあげる、きっと心臓はさぞ美味しいのだろうね。
「いただきます」
 言ってまだ温かい彼女の腕を切り落とした。





あとがきします→


 






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -