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「さが、る」 掠れた声に名前を呼ばれてぶっ飛んでいた意識が引き戻される。噫、嗚呼。その発色のいい唇に寒気がしたのは何度目、だろう。その頬に生を感じて嫌気が点した、のは。力を込めれば薄い肉越しに筋肉の感触が指に食い込む。細い細い、その首筋。 「さ、が、っ」 真っ黒な目が、見開かれる。苦しい、と訴えて真っ白な手が俺の腕を掴む。噫こんなにも美しい彼女が死体になれば、それはどんなにか素敵だろう。真っ白な肌は青白く、白を通り越した白になるんだ。唇も、頬も、白白白。その肌色に真っ黒な瞳は今以上に映えるに違いない。 「ね、俺を見て」 囁いて、笑う。俺の思い通りにならない彼女とは、さよなら。だ。 絞殺は多少汚れるようだけれど、それでも彼女の体に必要以上の傷をつけなくて済むので俺は好きだ。ぐ、と力を込めれば細くなる気管、どくどくと動脈が脈打っているのがよく手の平に伝わる。 「っ、う、」 もう俺の名前を呼ぶこともできないのか彼女のぽってりした唇は空気を求めるだけの意味のない呻き声に変わった。その歪められた表情に最後が近付くのを感じてぞくりとする。噫、さよなら。でも、大切にするから。俺に看取られて死ぬなんて素敵でしょ。 「大丈夫。大切にするから、ずっと」 彼女の手が、最後の抵抗のように俺の腕を引っ掻いた。
死体愛好者
冷たい彼女の髪を優しく撫でてやる。唇も頬も白、白、白。真っ白な彼女は雪みたいで、そんな彼女は冷たい死体になった今の方がやっぱりずっと綺麗だった。とりあえずは彼女が腐ってしまわないように、蝋で固めて飾っておこう。 「愛してるよ、」
だから君のすべてが欲しかったんだ
‐‐‐‐‐ 『狂おしいぐらい愛して?』様に提出∩^ω^∩ そういえばはつさがるじゃないか
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