きゅ、と彼女の小さな爪先がうずくまったソファーの上で更に小さく器用に丸くなる。それからその小柄な体躯もきゅう、と縮まってしまって膝を抱える腕すら体を縮める手助けにぎゅうぎゅうと力を込め始めてしまって、今すぐ膝に埋めた顔を引っ張り出してその腕を解かなければ彼女はどんどん縮まってしまって消えてなくなってしまうような気がした。それは、その姿はぺたんこのお腹の中でぐつぐつぐつぐつ煮込まれているであろう感情を必死に耐えている彼女特有の癖、である。
「元気ねえな」
「元気すぎて困るくらい元気だ」
 そう言ってひょこりと膝の上に顎を乗せた彼女に一先ずは安心する、これで彼女が縮まって縮まって消えてしまう事態は避けられたわけだが、彼女のメンタル面に関しての情報は皆無なわけで。とは言っても彼女は、ぐつぐつ煮込んでいる感情が怒りであれ悲しみであれ辛いという具体的な思考であれそれらを探られるのが非常に苦手な人間だったりする。
 人間関係良好、人当たり良好、性格に著しい不備もなし。多少人見知り気味でけれど馴染めば人懐っこい、そんな難解で単純な性格の彼女はとても扱いやすくて扱い辛い裏と表があるようで実は解りやすくも一面しかないという結局のところ難解な人物である。子供っぽいくせに変に冷静で時折頭の一部がごっそり死んだように冷めきっていることもしばしば、そんな時俺は自分の大人気なさを感じずにはいられないのだ。そして彼女は彼氏である俺にさえ、本当に時々、薄く、けれど屈強な壁でもってあえて隔たりを作ることもある。これ以上は入ってこないで欲しいと言うような、無言の威圧感。だから俺はいつも、あえてただ隔たりごと彼女を抱き締めるのである。それは今日の場合も、だ。
「俺には、お前が必要だよ」
「なに、きゅうに、」
 ぎこちない声は震えていて核心を突かれたことは明確だった。彼女はぐつぐつと煮込んでいる感情を故意に探られるのを嫌う。けれど嫌っているのと同じくらい今の自分を解って欲しいと常に頭の隅で考えている寂しがり屋さんだ。そんな彼女が俺は可愛くて愛おしくて仕方がない。
「お前が今辛いのも知ってる。寂しいのも知ってる。それを言えないのも知ってる。言う気がないのも知ってる。頑張ってんのも知ってる。そんな一生懸命なお前が銀さんは好きだよ、大切だよ、愛しいよ」
 すると彼女は再びその小さな顔を小さな両膝の中へと隠してしまった。けれど今度は縮まって消えてしまうような不安感はない。ただ彼女のすすり泣く声はどこか安堵したようなそれで嬉し泣きのようなそれで、だから俺はそんな華奢な彼女の体をぎゅっと力強く抱き締めたのだった。



心臓をはんぶんこしよう




「ぎ、んちゃん、」
「ん?」
「お、おたんじょうび、おめ、おめで、と、」
「…。ぐあああ…!」
 銀さんを殺す気ですかコノヤロォオオオオ!!!!きゅんときた(泣き顔に)!きゅんときたこれ(泣き顔に)!



‐‐‐‐‐
企画「101010」さまへ提出!
銀さんハッピーバースデイトゥーユゥウウウウウウ!!!!
遅れてしまってすみませんでしたあああorzorzorzorzorzorz!!!!!!!!

こんなこと言われたいけど銀さんが久しぶりすぎて似非っぽい気がしないでもない。←


 






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