山崎退という真選組の監察をしている彼は何故かミントンに全力でうざいくらい全力で、時にカバディなるものをやってみたりあんパンがあまり好きでもないくせに張り込みのために買い込んだり副長にパシられたりそうごたん隊長にパシられたりしている優男、である。背は低めで体格もふと見ただけでは優男代表のような彼だったが、背中は意外と広いし胸板も厚いし腕もそれなりに筋肉質でわたしはそんな彼が割りと好きだった。あえて一部分を強調するならば"優しい彼"が、だ。
 だからこの状況が疑問で疑問でそれはもう激しく疑問で仕方がないわけで、もう誰でもいいから例えば手付きの怪しい万事屋の旦那やさがるんと同じくらい優男である新八くんでも誰でもいいから是非ともこの状況を、この非日常的状況を説明していただきたいし助けていただきたいですヘルプミー!エマージェンシーエマージェンシー!緊急事態としか言いようがないこの現状の打破を誰か!警告!警告!いろの活動限界まであと、
「おはよう、いろちゃん」
「あ、うん。おはようさがるん…じゃねェエエエエエ!!!!」
 ばちこーん。といつもなら素直に顔面に受けて吹っ飛んでくれたはずのわたしの右フックは何故かさがるんの手の中である。拳を強く握り締めていたことやさがるんの一回りも二回りもでかい手がわたしのその拳を力強く掴んでいることも相まって自分の爪が手の平に突き刺さって少し痛かった。…なんでだ。いつの間にこんなに強くなったんだという疑問が沸き上がってははたとこの状況を思い出して引っ込んでいたはずの疑問が更に疑問を上塗りする。まずい。非常にまずいぞう。
「つかぬことをお伺いしますがさがるんは一体何をなさっているのですかな。わたしに解る言語を用いて五文字以内で答えやがれコノヤロー」
「何って、ナニ?」
「…やっぱりかァアアアア!!!!貴様は誰だァアアアアア!!!!」
 再度放った左フックがばちこーんと顔面に入る。わけもなく。呆気なく両手とも捕まってしまってみっともなくさがるんの左手にて頭上へひとつにまとめられてしまった。もしかして下剋上か何かですか。あまりにもわたしがあなたに右だとか左だとかでフックをお見舞いするからなのでしょうか。
 ごそりとさがるんの右手が一旦中止していた行為を再開する。わたしはあなたのこと嫌いではなかったよ寧ろ好きでしたよ、でもこれってなんなのですか。なんの仕打ちなのですか。


 






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