「ちっがうヨずれてるううう!」
「え?ん?えっ?」
 意味が解らない、というようにすべての動作を停止した総悟に神威が困ったような顔をして眉根を寄せる。僕がやるヨ、とてきぱき神楽のオムツを代え始めたその姿に心底感心したらしい総悟がお前すげーなと目を丸くして呟いた。
 神威曰く恥ずかしがり屋さんで父の日のサプライズに困っていた総悟は自分の姉であり父親の奥様になるミツバと坂田家にお邪魔していた。理由は二日前相談した通り坂田家と合同で父の日をするためだが、総悟は神威とケーキ作りから一旦脱退して神楽の世話に手を焼いている。慣れている神威とは対照的におろおろしっぱなしで抱っこもまともに出来ないような状態だが、懸命に頑張っている様子はよく伺えた。そして神威に細かく指導された結果赤ちゃんにミルクを飲ませるというスキルを取得。一生懸命うばうば喋っている神楽を眺めているとケーキ焼けたよとお声がかかったので、とりあえず神楽をベビーベッドに寝かせてキッチンまで二人でダッシュした。



「まったくさ、なんで今日は二人で一緒にお出かけして帰宅しなきゃなんないんだろうね、まじで謎だわ」
「俺が知るか。そう言われたんだから仕方ねえだろ」
 あーあ、憂鬱だわ。日頃の疲れが倍増するわ。かなりの速度で倍増するわ。とかなんとかぶちぶち言いながら銀時と土方の二人で仲良く帰宅する。本来日曜日は二人とも休みなので昼過ぎまで寝ているかのんびりする予定だったのだが、朝早く嫁と嫁になる予定の女に叩き起こされて「夜まで二人で時間を潰してきてね」とすごくいい笑顔で言われ、いってらっしゃいぱぱいってらっしゃいひじかたと息子と息子になる予定の生意気な坊主に家を追われてしまった。仕方なく(逆らうと怖いので)二人で出かけて映画だの買い物だのAVコーナーだのを回って回り尽くして今に至ったのだがどうも腑に落ちない。なんで単独行動がNGなんだ、なんで一緒じゃなきゃ駄目なんだ。とはいえ同じマンションのお隣さんなのでどうしたって帰り道は同じわけなのだが。
「銀さんと大串くんのお帰りですよー」
「誰が大串だゴルァア」
 がちゃ、とドアノブを捻りながら二人で坂田家の玄関に足を踏み入れる。扉を閉めて靴を脱ぎにかかっていると神楽を抱っこした神威がダッシュでお出迎えにきたので思わず銀時の顔が青ざめた。走るな神威ィイ!とかなんとか叫びながら急いで靴を脱ぐ。
「ぱぱおかえり!大串くんおかえり!」
「お、おう」
 複雑そうな表情をしながら土方がそれに応える。総悟は恥ずかしがり屋さんだからリビングだよ、とよく解らないことを言う神威に促されて足早に三人でリビングへと向かった。神楽は銀時に抱っこされながら嬉しそうにうばうば。すげー喋るなこいつ、と物珍しそうな土方と銀時の二人でそれを眺めていると唐突にリビングの扉の前で神威が立ち止まった。危うく蹴り飛ばしそうになりながら一緒になって二人も立ち止まる。
「ぱぱ、今日はにじゅうにちです」
「あ?おお、そうだな」
「大串くん、なんのひですか」
「ん?なんかあったか?」
「父の日でさァひじかたこのやろー」
 解らない、という風に小首を傾げる二人にリビングから僅かに扉を開けて顔を覗かせた総悟が言い放つ。そういえば、と思い付いたた瞬間、総悟が扉を大きく開け放ちながらぽかんとしている土方へ思い切りタックルをかました。



父の日は合同でお願いします




「…仕方ねェから父親だとみとめてやりまさァ」
「えっ、ま、まじでか!」


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