「なあなあかむい、」
「ん、タコさんウインナーくれるの?」
「ちげーよ」
 どす。と神威のフォークが物凄い勢いで机にぶっ刺さる。今の今までその場所に置かれていた青色の弁当箱を自分の腕の中に避難させた総悟は幾らか不満そうに神威を見やった。神威は神威で不満そうに総悟の腕に抱かれた弁当箱を凝視している(正しくは弁当箱の中のタコさんウインナー)。いいじゃん、ちょうだい。とか言いながら握り締めたフォークを神威が無意味に振り回した。ぱたぱたとぴんく色の三編みが尻尾のように揺れる。
「おま、自分のタコさんウインナーあるじゃねェか」
「いいの。ならべて食べくらべするんだヨ」
「俺のねーちゃんのがうまい」
「いや僕のままのがうまい」
 じゃあ交換ね、はい。とかなんとか実に平和に事態を収拾しながら互いのタコさんウインナーを差し出す。ぶすり、とそれぞれのタコさんウインナーにフォークを突き刺しながらそうじゃなくて、と思い出したように総悟が脱線した話を元に戻した。もぐもぐとタコさんウインナーを咀嚼する神威は聞く気があるのかないのかとりあえずうん。とだけ相槌。
「あさって、父の日だろ、だからかむいはなんかするのかなと思ったんでィ」
「うん。ままがひみつのケーキやくから僕はお手伝いと神楽のおせわだヨ」
 そ、そうか、と微妙な反応をする総悟に小首を傾げながらくま型ハンバーグをぱくりと口に放り込む。総悟はなにかしないの?という神威の問い掛けにびくりとしながら総悟の表情があからさまにひきつった。それから取り繕うようになんでひじかたあんちくしょうなんかに、とか言いながらやっと交換したタコさんウインナーをぱくんと頬張る。
「総悟も同じなまえになるんだからネ、ぱぱになるんだからネ」
「な、なんねーよ!」
「なるヨー、大串総悟」
「なんかちがくね?」
 うーん、うーん、と唸る総悟を神威が一瞥する。とりあえずさーあ、恥ずかしいなら僕んちで一緒にする?そう言ってデザートのりんごにどすりとフォークを突き刺す神威に総悟が真っ赤な顔でぎこちなくこくりと頷いた。



6月18日(金)




「まま、総悟んちと一緒に父の日しよ」
「え?いいけどどうしたの?」
「総悟が恥ずかしがり屋さんなんだヨ」
「…ん?」


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