とは言え相手は銀時が何を聞こうと何も答えないので銀時には相手の正体を知り得る術などないのだが。
「てかなんだこの携帯。そう言えばなんでお前んとこの星からの電波受信できんだよ」
『うーん、お兄さんには多分解らないから説明なしで』
「意味わかんねェエエ!!」
 いつも通りに思い切り叫んでしまってからしまったと口を噤む。どうも自分は病人への配慮が思っている以上に出来ないらしい。 そんな自分を不甲斐なく思いつつ銀時は未だに手をつけていなかった荷物を取り出して役目を終えたダンボール箱を丁寧に潰した。ぺたんこになったそれを適当に壁へ立てかける。
『じゃあ仕事あるしそろそろ切ろうかな。あ、最後にはすに代わってよ』
「あー、熱出して寝込んでる」
『うっそありえねえ。薬は?』
「急にキャラ変わったなお前」
 そう言う銀時に自称ナギはまたげらげらと笑いながらだってナギだったからねと再び意味深な言葉を吐き出した。その言葉はあきらかに彼がナギであるということを否定していたが、けれど銀時がそれについて突っ込む前に相手はさっさと話をおし進める。はすが大切だということが電話越しによく伝わってきてなんだか嫉妬に似たような感情がぼそぼそと銀時の中でくすぶった。
『薬は半分の量でいいからな、それ以上やると効きすぎて逆に体調崩すから気をつけろよ』
 随分ワイルドな印象に変わった自称ナギは最後にはすを大事にしてあげてねと心底心配そうに、それでいて愛おしそうにそう言った。嫁に貰うみたいだなあとかぼんやり考えつつじゃあまた電話するという自称ナギの言葉に意識を引き戻される。銀時が短くおうとだけ答えると静かにぷっつりと電話のきれる音が響いた。銀時は終話ボタンをぽちりと押すと荷物を小脇に抱えてはすの寝ている和室へと足を運ぶ。結局誰なのか解らなかった。
「銀、ちゃん」
 はすの隣へ腰を下ろすなりそろそろとその視線が銀時へと向けられる。銀時の思った通りはすは寝られなかったようでお相手は誰だった?とまた微妙な言葉遣いで銀時へ尋ねながら小首を傾げた。敬語をはすから引き剥がすのは思っていたより難易度が高いらしい、とは言えはすも頑張って言葉遣いを直しているので突っ込まないでおく。
 銀時はにっこり笑うと携帯と荷物をはすの目の前へと差し出した。


 








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